私が社長に就任した2005年の4月が、サイボウズの転換点になりました。それまではいわゆる「ITベンチャー」だった会社を、さらに大きくし、安定させる試みが始まったのです。具体的には、組織体制、人事評価、社員の働き方などの変革です。 当時のサイボウズは、大きく2つの問題を抱えていました。1つは「社員が辞める」問題。離職率は毎年20%以上あるのが当たり前でした。もう1つは「採用できない」問題です。創業当時からの「ITベンチャー」のイメージを引きずり、一攫千金の野心をもつ人材を採ろうとしていたのですが、そんな人ばかりを集めるのはなかなか難しい。そのため数年間は社員がまったく増えず、80名前後に留まっていました。 ベンチャーはどこも似たようなものなのかもしれません。でも私は、サイボウズにはもっと面白いことができるチャンスがあると思っていました。それにちょうど、扱うソフトも中小企業向けから大企業向けの