最初に言っておくと、筆者は、環太平洋経済連携協定(TPP)への日本の参加は選択の余地のない決断だったと思っている。だからといって、TPPが本稿のテーマである日本の農業にとって好機だと軽々に言うつもりはない。そうではなく、そもそも農業が厳しい状況にあるなかで、さらにTPPという試練が重なるが、この危機をチャンスに変えるしかないと思っている。 なぜ日本がTPPに参加し、実現に尽力すべきかと言えば、答えは単純で、中国の台頭があるからだ。ここ数年、中国は景気減速が続いており、もう何度目かの「崩壊論」のようなものがあちこちで取り沙汰されている。だが、この国は成長余地がまだ十分にあり、曲折はあっても間違いなく大きくなる。 中国をいかに引き込むか 中国の市場は日本経済にとっても魅力的であり、対抗心を前面に出して張り合う必要はない。ただ、中国の存在感の高まりは2つの意味で、既存の経済システムとは違う緊張を