本来は傷ついて癒しを求める者に手を差し伸べるのがキリスト教会の役割のはずだ。だが神父の過ちに触れる時、長崎大司教区はその逆で、厄介者を排除する――。その行動の背景を探っていくと、億単位の信徒からの献金を1人の神父が詐欺的投資に投じて消失させていた。聖職者たちは教会を私物化し、保身のためには信徒を傷つける、およそキリスト教の教えとは無縁の体質に成り果てていた。(全2回の1回目/後編に続く) 司祭研修会で起きた「魔女狩り」 きっかけは、2019年2月4日、原爆投下の爆心地に近い浦上にある大司教館の会議室で開かれた、司祭研修会と題した会議でのことだった。 「わがの思い通りになると思うなよ」 広い会議室の前列から荒っぽい長崎弁を浴びせたのは、やくざではなく、黒い立ち襟の祭服に身を包んだ約150人の神父のうちの1人だった。矛先を向けられた50代の女性職員は、強張った顔のまま下を向いていたという。女性