「――じゃあ、『走る』と『歩く』の違いは?」 「一一じゃあ、どうしてこれは『広い紙』と言えないの?」 そんなシンプルな問いかけから始まるこの物語は、なかなか引きつけられるものがあった。数学ガールの言語学版にふさわしく、非常に取っ付きやすいが奥が深い本であった。キャラクターがべたべたなのもよく似ているが、これはうまく役割分担されているとも言える。 言語学そのものも楽しめたが、その壮大な学問にどのようにアプローチするのかという視点で見ても非常に面白い。 「ちなみに音声学は主に3つの分野に分かれるよ。音が自分の口を出るまでの段階と、音波が空気中を伝わつていく段階と、音が相手の耳に入るまでの段階の3つ。 まず最初の、どのように音を発声するかという段階が調音音声学。 音声学というと通常これを指すよ。 次に、音がどのように伝播するかを調べるのが音響音声学。音波としての音声を取り扱うから、物理学の分野と