鈴置 高史 韓国観察者 元日本経済新聞記者。1995~96年ハーバード大学日米関係プログラム研究員、2006年イースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。02年度ボーン・上田記念国際記者賞。 この著者の記事を見る
ここのところ、偉い人の失言を糾弾する原稿ばかり書いている気がする。 本来、私は、この種の仕事を好まない。 そもそも、誰かの発言の一部を引用して、その言葉の不穏当さや不適切さを言い立てるタイプの言説は、「重箱の隅をつつく」感じがして、見栄えがよくないからだ。 だから、私は、たとえば、閣僚なり経営者なり芸能人なりが、うっかりもらした片言隻句に雑誌やテレビのレポーターが群がって騒いでいる図を見ると、 「あんな仕事はしたくないものだ」 と感じる。 「まるで、弱ったヌーを見つけたハゲタカじゃないか」 と思うからだ。 ただ、今年になってから断続的にもたらされている政府関係者の失言は、座り慣れないポストに浮かれた閣僚が思わず漏らした不適切な本音や、脇の甘い議員がTPOをわきまえきれずに放ったジョークとは性質が違う。 もう少し根の深いものだ。 森さんや麻生さんが時々やらかす失言は、それはそれで困った逸脱で
永濱 利廣 第一生命経済研究所主席エコノミスト 日本経済研究センター、東京大学大学院経済研究科修士課程等を経て、2008年4月から第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト。経済統計、マクロ経済の実証分析を専門とし、内外経済の長期予測を担当する。 この著者の記事を見る
「外交戦で日本に勝った!」と韓国紙が快哉を叫んだ。4月にアジアを歴訪するオバマ米大統領が、日本訪問の日程を縮めても韓国に立ち寄ると決めたからだ。だが、一時は大喜びした韓国人も「オバマ訪韓」の代価の大きさにはたと気付いて焦り始めた。 米国の親日派も韓国の味方だ ・オバマ訪韓、「5年で4回」に難色の米国 ・安倍の「靖国オウンゴール」で急反転 ・安倍の挑発に米の不満爆発 ・アーミテージら日本通まで「オバマ歴訪から韓国除いてはダメ」 ・安倍に後頭部を殴られたバイデンも韓国の立場を積極支持 朝鮮日報のワシントン特派員の記事「韓日外交戦の舞台裏」(2月14日)の見出し一覧だ。記事の要旨は以下だ。 ・オバマ大統領は日本、マレーシア、フィリピンを訪問する予定だった。韓国外務省が安倍晋三首相の靖国参拝を機に巻き返して、韓国訪問を実現した。 ・「韓日両国の間で歴史認識を巡る対立が深まる中、日本だけ訪問すれば日
安倍晋三首相による昨年12月26日の靖国参拝がいまだに尾を引いている。 参拝直後、米国側は「失望」という言葉を表明。今月は衛藤晟一首相補佐官による「われわれの方が失望だ」という発言が飛び出した。日米両国だけでなく中国・韓国をも巻き込んだ外交上のせめぎ合いが続いている。 安倍首相は昨年末の参拝後、その目的について「尊い命を犠牲にされた御英霊に対して、哀悼の誠を捧げるとともに、尊崇の念を表し、御霊安らかなれとご冥福をお祈りすること」と発言した。首相は、他国から文句をつけられる筋合いのことではないと考えており、言動に自信さえのぞかせている。 安倍首相は米国が「失望」した真意をいまだによく理解できないでいるようでもある。日本の首相は過去に何度も靖国に参拝をしていたが、米国はほぼ黙認してきた。しかし今回だけは、なぜ態度が違うのかとむしろ反駁する。 小泉純一郎元首相は計6回、在任中に靖国参拝をしたが、
共和党の全候補を圧倒するヒラリー氏 2016年米大統領選の「前哨戦」が既にスタートしている。世論調査では、ヒラリー・R・クリントン前国務長官(66)が圧倒的な強みを見せている。 共和党サイドには、抜きん出た候補予定者がおらず、混沌状態が当分続きそうだ。「今、選挙が行われた場合、誰に投票するか」を問うGeneric Voteで、ヒラリー氏はすべての共和党候補予定者を8~21ポイント引き離している。 ("Election 2016 Presidential Polls, Real Clear Politics, 2/14/2014) 「前哨戦」は、まさに「イメージ合戦」だ。知名度に劣る者は顔と名前を売り込まねばならない。一方、ヒラリー氏のように「地盤・看板・かばん」のある候補予定者は、ネガティブ・イメージを払拭し、さらなるイメージ・アップを図ることが命題となる。 ヒラリー攻撃の先陣は「茶会支持
「はずみ車」の朴槿恵 お2人は2012年8月の日経ビジネスオンラインの対談で、いち早く韓国の中国傾斜、米中二股外交を予想していました(「韓国は『米中対立の狭間を上手く泳ぎ切れる』と考えている」参照)。 鈴置:確かに予想しましたが、こんなに速いスピードで進むとは想像もしませんでした。ことに保守の大統領の下で「離米従中」がこれほどはっきりするとは……。 木村:10年かけて起きるべきことが、2013年1年間で起きた感じです。今から考えれば、李明博・前大統領は、韓国の中国傾斜に対する「ブレーキ」でした。中国から「親米派」と警戒されていたので、仮に傾きたくても傾けなかった、という側面もありましたし。 今は逆に、朴槿恵大統領が韓国の中国傾斜への「はずみ車」になっています。中国傾斜は基本的には地政学的ともいえる、大きな流れの一環ということで説明できます。 ただ、そのスピードが余りに速いだけに、朴槿恵大統
「中国に寄りすぎた」 木村:鈴置さんとのこれまでの対談でも、ずっと観察してきた韓国の中国シフト。朴槿恵外交を支持してきた保守メディアが、ついに2013年秋頃から「中国に寄り過ぎてもまずい」と主張し始めました(「天動説で四面楚歌に陥った韓国」参照)。 日本についても「これ以上関係が悪くなれば支障が出かねない。実利のために関係を改善すべきだ」との記事が載るようになりました。最近では、日本を活用すべきとの意味で「用日」との表現も使われています。 メディアの主張に留まらず外交部や、青瓦台(大統領府)周辺の人々も、ほぼ同じ時期に「日本との関係を立て直そう」と動き出しています。 ただ、韓国政府の「本丸」である朴槿恵大統領と最側近がどう考えているのか、はっきりしません。果たしてメディアや外交部の「焦り」が青瓦台の中枢部にも共有されているのか……。言えることは、日本だけではなく中国や米国との関係も含め、韓
今年1月15日、ワシントンDCのナショナル・プレス・クラブで講演した国際通貨基金(IMF)のクリスチーヌ・ラガルド専務理事は、「2014年は、世界経済が危機から本格的に脱却する区切りの年となるだろう」と述べ、ユーロ危機などの行方について楽観的な見通しを明らかにした。ラガルド氏は、「厳しい寒さは過去の物になり、地平線には光が見える。私は、これまで続いた沈滞の7年間が、2014年を境に、力強い躍進の7年間に変わってほしいと望んでいる」と語った。 IMFは、去年10月に発表した世界経済見通しの中で、今年世界の国内総生産(GDP)が約3.6%増えると予測していたが、1月21日に予測成長率を3.7%にやや上方修正。 IMFは、2009年以来世界経済の足を引っ張ってきたユーロ圏について、2012年、2013年とマイナス成長が続いた後、今年は3年ぶりに1.0%というプラスの成長率を記録すると予想している
参院国家安全保障特別委員会の中川雅治委員長(自民党)は12月5日、特定秘密保護法案の採決を強行し、同法案は、自民、公明両党の賛成多数で可決された。これを受けて、政府、与党は、遅くとも会期末の12月6日までに、参院本会議で同法案を可決成立させる意向なのだそうだ。 率直に申し上げて、うんざりしている。 時期として手遅れになってしまったが、一応、思うところを書いておく。 タイミングのことを言うのなら、5カ月前の段階で既に手遅れだったと思う。さらに言えば、当件に関して、手遅れでないタイミングは、そもそも存在していなかったのかもしれない。自民党にフリーハンドを与えた以上、この日の来ることは既定路線だった。 これまでにも、当欄で特定秘密保護法案をとりあげる機会がなかったわけではないのだが、その度に、先送りにしていた。 理由は、ひとことで言えば、うんざりしていたからだ。 前半では、まず、私がこの話題を扱
新たなエネルギー基本計画の議論が大詰めを迎える中、ある人物の発言が物議を醸している。小泉純一郎元首相による「脱原発」発言である。 安定供給の確保に不可欠なバーゲニングパワー 経済産業省の総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会で進められている、新たなエネルギー基本計画の策定に向けた議論に大きく影響することは、おそらくないだろう。とはいえ、小泉氏の発言は、やはり国民、世論への影響力が大きい。現在は一私人だが、国家を代表していた元首相である。だからこそ、責任を持って、もう少し慎重に発言していただきたい。 小泉氏が「脱原発」の最大の根拠としているのが、使用済み核燃料(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場の問題だ。しかし、もう少し冷静かつ定量的に議論すべきだろう。 仮に、震災前と同程度に原発が稼働し、日本の総使用電力量の約3割、年間約3000億キロワット時を供給するとしよう。その場合に発生する使用済
戦争が近づいている恐怖感が、私を当選させた――。先の参院選の1人区で自民党は圧勝し、全国で落とした選挙区はわずか2つ。その1つが沖縄選挙区だ。沖縄社会大衆党というローカル政党から出馬した糸数慶子参院議員は、「平和の一議席」と呼ばれる勝利を手にした。その背景には沖縄の人々が、戦争への危機感を高めていることがある。尖閣問題、そして改憲…。その先に戦争が見えるという。「本土」にいては分からない未来を、沖縄県民はとらえている。その代弁者、糸数議員が「戦争と平和」と語る。 先の参院選では、自民党が圧勝する中、糸数さんは自民党候補を破って当選しました。奇跡的な勝利に見えますが、何が糸数さんを後押ししたのでしょうか。 糸数:自民党が圧勝したのは、民主党政権が国民の期待を担って政権交代を果たしたにもかかわらず、期待に応えられなかったからです。それが3年半も続いたことが、民主党政権の崩れていく1つの要因だっ
このところ景気の動きが大注目されている。これには2つの理由がある。1つは、アベノミクスが効果を上げ景気は本当に良くなっているのかという関心が大きいことであり、もう1つは、消費税率を引き上げるだけの経済環境が整っているのかという問題意識が注目されていることだ。そこで本稿では、景気の現状と消費税率の関係について考えてみることにしよう。 景気を見るための3つの道具立て エコノミストは誰もが自分なりの景気分析手法を身に付けているのだと思うが、私の場合は、次の3つの道具立てを特に大切にしている。 第1は、経済統計を読みこなすことだ。しばしば、景気予測は天気予報に例えられるのだが、天気予報と景気予測で決定的に異なる点がある。それは、天気予報をする時に、「今の天気」は誰もが分かるが、景気については「今の景気」は分からないということだ。だからこそ、種々の経済統計を読みこなすことによって、「現在の景気がどん
本日より、「デジタル政策の未来像」と題した新コラムを開始します。アナログからデジタルへの移行により、IT(情報技術)やコンテンツがビジネス、文化、社会の全般に与える影響は強まるばかり。かつてないほど大きな産業構造の変化が起こっています。この流れにどう対応していくべきか。政策的な観点をベースに、デジタルにまつわるあれこれについて書いていきます。 第1回のテーマとして取り上げるのは、筆者自身も深くかかわっている日本のコンテンツ政策。日本の競争力強化に向けてどう動いているのか。策定されたばかりの「知財ビジョン」に加えて、最近、何かと話題になっている「クールジャパン」政策と合わせて紹介しよう。 1カ月ほど前となる6月7日、日本政府の知的財産戦略本部(知財本部)で「知的財産政策ビジョン」(知財ビジョン)が策定された。筆者自身、ワーキンググループの共同座長として同ビジョンの策定に大きくかかわった1人だ
目覚ましい経済成長のなかで数々の問題に直面している中国。最大の課題は成長の「質」の向上である。新しい政府がスタートした中国には日本企業の持つ「質」が生かされる絶好の機会があり、冷静な視座さえあれば、日本にとって成長の可能性が広がる。 昨年12月末に閉幕した中国の商務工作会議。毎年12月初めごろに開催される経済工作会議とは異なり、内外で報道されることのあまりない会議である。 席上、陳徳銘・商務大臣(当時)は「外資三法」の改正を検討していることを表明した。「外資三法」とは、外資企業法、中外合資経営企業法、中外合作経営企業法の3つの法律である。 中国経済が順調な発展を遂げているなか、外資の対中投資をめぐる状況には厳しいものがある。2012年、対中投資により設立された外資企業は2万4925社と、対前年比10.1%減となった。対中投資額は1117.2億ドル、これは対前年比3.7%の減少である。 問題
東京電力福島第1原子力発電所の事故から2年。日本のエネルギー政策は、今も混迷の中にある。日本のエネルギー政策はどこへ行こうとしているのか。福島第1原発事故の際に内閣官房参与として事故対策に取り組んだ田坂広志氏(多摩大学大学院教授)が、原発を中心とするエネルギーの様々な問題について、インタビュー形式で答えていく。 総理の特別顧問である内閣官房参与の立場にあった田坂氏は、なぜ総理に「脱原発依存」の政策を進言したのか。事故から2年が経過した今、改めて真意を語る。 2011年3月11日の東日本大震災と福島第1原子力発電所事故から2年が経ちました。 この事故直後の3月29日、田坂教授は原子力の専門家として、当時の菅直人総理から協力を要請され、内閣官房参与に就任し、原発事故対策に取り組むとともに、原子力行政改革、原子力政策転換にも取り組まれました。 2年を経て、改めて伺いますが、原発を推進する立場にあ
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