国立天文台三鷹キャンパス(東京都三鷹市)は多摩川の支流によって削られた武蔵野台地の崖(国分寺崖線)の上にある。武蔵野の雑木林の面影がある構内には,国立天文台の源流となる東京帝国大学東京天文台が大正時代末,都心から移転してきた当時に建てられた天文ドームなどがいくつも残り,近代天文学の歩みを肌で感じることができる。もっとも移転当時,工事や観測の妨げになるため木々は伐採されて一面ススキの原になり,富士山を遠望できる別天地だった。戦後,天文台の観測施設が各地に移転し,再び武蔵野の面影を取り戻した。(文中敬称略) 「新宿を起点とする京王電車を調布の次の上石原(現・西調布駅)で降りると,新天文台への新道は停留場前からすぐ起こっている。両側の麦畑や桑畑が尽きると,道は早くも深い雑木林や松林にかかって,そこに秋ならば桔梗,女郎花の類いが路傍の雑草を美しく彩っている。林を抜けると,道は爪先上がりの切通しの坂
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