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  • 読書メモ:『なぜ美を気にかけるのか :感性的生活からの哲学入門』&『近代美学入門』 - 道徳的動物日記

    なぜ美を気にかけるのか: 感性的生活からの哲学入門 作者:ドミニク・マカイヴァー・ロペス,ベンス・ナナイ,ニック・リグル 勁草書房 Amazon 『なぜ美を気にかけるのか』は美学の入門書でもあるが、そのなかでも「美的価値」や「美的感性」「美的生活」の問題を扱っており、「優れた芸術の定義とは何か」といったトピックではなくタイトル通り「なぜ美を気にかけるのか」という問題……なぜわたしたちは服や髪型のお洒落さ/ダサさや事の美味しさ/不味さを気にしたり、聴く音楽や視聴する動画について自分なりの選択を行おうとしたりしているか、といったトピックを扱っている。ここでいう「美」はかなり広い範囲の物事を指していること……「 "美"といえるのは素晴らしい芸術のみである」といったエリート主義を排して、どんな人でも日常的に様々なタイミングで様々な領域の「美」を気にかけている、というスタンスで各人が論じていること

    読書メモ:『なぜ美を気にかけるのか :感性的生活からの哲学入門』&『近代美学入門』 - 道徳的動物日記
  • 読書メモ:『市民的抵抗:非暴力が社会を変える』 - 道徳的動物日記

    市民的抵抗:非暴力が社会を変える 作者:エリカ・チェノウェス 白水社 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』、『貧困』と、最近のこのブログではVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介し続けているが、今回は同じくオックスフォードのWhat Everyone Needs to Knowシリーズからの邦訳である『市民的抵抗』を紹介。 「市民的抵抗」の定義とか書の目的とかは以下の通り。 市民的抵抗とは、政治的、社会的、経済的な現状を打破しようとする目的で、暴力を用いる、あるいはちらつかせる者に対して、暴力を用いずに、暴力をちらつかせたりせずにおこなう集団行動様式である。市民的抵抗は、手段と目的において、組織立っており、民衆によるものであり、明確に非暴力である。書は、市民的抵抗キャンペーンがかたちづくり、戦略を立て、組織化し

    読書メモ:『市民的抵抗:非暴力が社会を変える』 - 道徳的動物日記
    agrisearch
    agrisearch 2023/10/03
    「もともと社会運動に参加していたり関心があったりする人や左翼的な価値観や考え方をしている人たちに対してその人たちが望むような議論を提供して気分を良くさせつつアジテーションを行う、といった内容」
  • 効果的な利他主義と動物の権利運動(読書メモ:『アニマル・スタディーズ 29の基本概念』③) - 道徳的動物日記

    アニマル・スタディーズ29の基概念 平凡社 Amazon 第2章「アクティヴィズム」の著者はジェフ・スィーボウとピーター・シンガー。どちらも倫理学者であると同時に動物の権利運動に実践的に関わっている人だ。 この章で主に論じられるのは<効果的なアニマル・アクティヴィズム>について。 これは、エビデンスと理性を用いながらできる限り多くの善をなそうと試みる「効果的な利他主義」の考え方を動物の権利運動に当てはめたもの。 <効果的な利他主義者たち>全般、また個別的には<効果的なアニマル・アクティヴィストたち>は考えうる最も多くの善をなすために、どのようにエビデンスと理性を用いようとしているのか。ウィリアム・マッカスキルは、人々にいくつかの問いを促す有力なモデルを考案している。このモデルによるなら、<効果的なアニマル・アクティヴィスト>は、第一に、問題の規模を問うべきである。すなわち、その問題がほか

    効果的な利他主義と動物の権利運動(読書メモ:『アニマル・スタディーズ 29の基本概念』③) - 道徳的動物日記
    agrisearch
    agrisearch 2023/03/24
    「狭い意味での「動物の権利運動家」を自称する個人や団体が、畜産業者や動物実験業界よりもシンガーやPETAのような「新福祉主義者」に対する批判や攻撃に熱心になる、というのは実にありそうなことだ」
  • 読書メモ:『現代思想入門』 - 道徳的動物日記

    現代思想入門 (講談社現代新書) 作者:千葉雅也 講談社 Amazon 大学生から大学院一年生の頃までのわたしはいっちょまえに「哲学」や「思想」に対する興味を抱いており、哲学書そのものにチャレンジすることはほとんどなかったが、様々な入門書は読み漁っていた。現代思想については難波江和英と内田樹による『現代思想のパフォーマンス』でなされていた紹介をもっとも印象深く覚えており、次点が内田樹の『寝ながら学べる構造主義』や竹田青嗣の『現代思想の冒険』。個別の思想家についてはちくま新書の『〜入門』やNHK出版の『シリーズ 哲学のエッセンス』を読んでいたが、とくに後者についてはあれだけ何冊も読んだのに一ミリも記憶が残っていない。そして、修士論文を書くために英語圏の倫理学や政治哲学のをメインに読むようになってからは現代思想に対する興味はすっかり薄れて、以降ほとんど触れなくなってしまった。 千葉雅也による

    読書メモ:『現代思想入門』 - 道徳的動物日記
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    agrisearch 2023/02/17
    「哲学とか学問に対して素朴な憧憬を抱いている身としては「それって現代思想家たち自身が自分たちの主張や議論が真実であるとか重要であると思っているとは限らないってことで不誠実じゃん」と思ってしまう」
  • 「愛のあるセックス」はなぜ必要か(読書メモ:『性と愛の脳科学』) - 道徳的動物日記

    性と愛の脳科学 新たな愛の物語 作者:ラリー・ヤング,ブライアン・アレグザンダー 発売日: 2015/12/09 メディア: 単行 このの概要については先日の記事でさくっと触れているので、いきなり題から*1。 このでまず面白かったのが、第4章から第6章にかけて、女性と男性が異性に対してそれぞれに抱く愛情の質の違いを分析するところだ。 第4章の「母性を生む回路」では、自分が産んだ子供を世話したいと母親が思う感情、つまり「母性愛」の存在が脳科学の観点から説明される。端的にいえば、母性愛とはプロラクチンとオキシトシンというホルモンによって引き起こされる。オキシトシンが母親に与える影響の具体例は、以下のようなものである。 人の母親が赤ん坊を胸に抱いてやる時、母親は赤ん坊の顔と目を見つめ、赤ん坊もしばしば、母親の顔を見つめ返す。母親は赤ん坊の泣き声や、赤ん坊の声に耳を傾け、自分からも声をかけ

    「愛のあるセックス」はなぜ必要か(読書メモ:『性と愛の脳科学』) - 道徳的動物日記
  • 「人生の意味」の進化心理学 - 道徳的動物日記

    野蛮な進化心理学―殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎 作者:ダグラス・ケンリック 発売日: 2014/07/18 メディア: 単行 ダグラス・ケンリックの『野蛮な進化心理学:殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎』の白眉は、やはり、第七章の「マズローと新しいピラミッド」だろう。 このについて紹介している他のブログの記事やTogetterまとめでも、この章がメインとして扱われている*1。 画像もいろいろとネットに転がっているので、貼り付けてしまおう。上が「マズローのピラミッド」で、下が「ケンリックのピラミッド」だ。 なお、「ケンリックのピラミッド」は「生活史理論」によって補強されるものである、ということには言及しておくべきだろう。 生活史理論は、「どんな動物の生涯も二つないし三つの段階に分けられ、それぞれで投資におけるトレードオフが異なる」 (p.237)という発想に基づく。人間の場

    「人生の意味」の進化心理学 - 道徳的動物日記
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    agrisearch 2021/01/14
    「野蛮な進化心理学」「ケンリックの議論はシンプルながらも説得力があり、結婚したり子どもを持ったりすることの意義を現時点で理解できない人に対する、程よい啓発や警告になっているように思える」
  • ひとこと感想:『ルポ:技能実習生』 - 道徳的動物日記

    ●『ルポ:技能実習生』 ルポ 技能実習生 (ちくま新書) 作者:澤田晃宏 発売日: 2020/05/15 メディア: Kindle版 世間では「奴隷労働」とか「騙されて日に連れてこられた」というイメージの多い技能実習生制度だが、主にベトナムの技能実習生制度を扱ったこのでは、「大半のベトナム人技能実習生たちは日で金を稼いで貯金を貯めることを目的にやってきて、そして実際に目的が果たされて満足して帰っていく。日の報道で話題になった奴隷労働的な環境はたしかに存在するが、それは一部であり、ベトナム人の側も"運が悪ければひどい環境に当たるが、そうでなければ金を貯めるという目的が果たせるものだ"という意識である」ということが書かれている。 もちろん技能実習生制度を全面肯定するではなく、第3章の「なぜ、失踪せざるを得ない状況が生まれるのか」では、劣悪な労働環境の事例もきちんと書かれている。それに

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    agrisearch 2020/07/06
    「…1割は人権や尊厳が無視された劣悪な状況で苦しめられているとしたら、全体的な帳尻とかwin-winとかを度外視して人権侵害の問題に対して"ヒステリック"に怒ることは近代人としてごくまともな反応ではあるだろう」
  • 進化心理学はなぜ批判されるのか? - 道徳的動物日記

    quillette.com 上記のQuilletteの記事を要約紹介しつつ、雑感を書く。…というか、ダラダラと長ったらしい記事なので、思い切って要点や特徴的な点だけ紹介する。 上記の記事では、デビッド・バスとウィリアム・フォンヒッペルという二人の進化心理学者が行った、"社会心理学者たちが進化心理学について抱いている認識"についての調査が参照されている。この調査によると、動物のみならず人間について進化心理学を適用することについては、社会心理学者たちの意見は分かれているそうだ。ダーウィンの進化理論が真実であることや、人間の様々な身体的特性が進化の産物であることにはほぼ全ての社会心理学者たちが同意しているのだが、身体のみならず心理や精神についても進化論を適用することに関しては、かなり賛否が分かれるのである。 進化心理学に批判的な社会心理学者たちは、宗教的信念や「人間は他の動物に比べて特別だ」とい

    進化心理学はなぜ批判されるのか? - 道徳的動物日記
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    agrisearch 2019/09/03
    「批判されるとき、大半の場合は「事実は何であるのか」「理論や論旨展開は妥当であるか」「証拠はあるか」といったことは問題にされていないのだ。批判者の目が向いているのは、批判対象ではなく、自分の仲間たち」
  • アニマルライツとフェミニズム - 道徳的動物日記

    The Feminist Care Tradition in Animal Ethics: A Reader 作者: Josephine Donovan,Carol J. Adams 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr 発売日: 2007/11/01 メディア: ペーパーバック 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る ヴィーガンフェミニズム論争とは何だったのか ・上記のSutaro氏の記事にも書かれているように、Twitterにてフェミニストのシュナムル氏が「ハーゲンダッツをべた」という旨の発言をしたことに対して、ヴィーガンのRac氏が「フェミニストなのに乳製品を肯定するのか」と批判しことをきっかけに、ヴィーガニズムとフェミニズムに関わる議論がにわかに巻き起こったようだ。その議論にはいわゆるTwitter論客も多数参加していたようだが(そして、その大

    アニマルライツとフェミニズム - 道徳的動物日記
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    agrisearch 2018/01/31
    「動物倫理の議論においてフェミニスト倫理やケア倫理が持ち出される際にも、基本的には、「理性的」であるとされる主流の理論に対するカウンター的な議論が行われる」
  • イギリスにおける動物愛護運動の歴史 - 道徳的動物日記

    www.csmonitor.com クリスチャン・サイエンス・モニター誌に掲載された書評を紹介する。 書評:『動物たちのために』 by ランディ・ドティンガ (Randy Dotinga) 数世紀前のイギリスで行われていた動物たちに対するショッキングな虐待は、歴史からは忘れられた。しかし、動物に対する虐待行為は、ぞっとするような遺産を英語の中に残している。 「コックピット(cockpit)」という単語は、もともとは闘鶏たちが死ぬまで戦う空間(闘鶏場)の事を示す言葉であった。「ブルドッグ(bulldog)」…今日のピット・ブルの先祖である…は、血に飢えた農民や貴族たちの群集の前で怒り狂った牛を攻撃していた。現在では卑屈や恥じ入りなどの表情を示す言葉である「ハングドッグ (hangdog, 吊るされた犬)」という単語でさえも、動物裁判を受けさせられた犬の哀れな末路にその起源を持つのだ。 現代と

    イギリスにおける動物愛護運動の歴史 - 道徳的動物日記
    agrisearch
    agrisearch 2016/12/07
    『動物たちのために』
  • スティーブン・ピンカーによる「動物の権利運動」論- 道徳的動物日記

    スティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』では、様々な資料や統計を駆使して、人類が歴史を通じていかに暴力を減少させていったかが示されている。扱われている「暴力」の種類も様々であり、国と国同士で行われる戦争やある社会が特定の集団に行う虐殺など集団間でのマクロな暴力から、残酷な処刑や拷問に決闘や魔女狩りなどの慣習に殺人事件などの集団内での暴力まで、いずれの形の暴力も減少していると示されている。第7章「権利革命」では、アフリカアメリカ人などの人種マイノリティ・女性・子ども・同性愛者などのマイノリティの権利が、特に20世紀後半に各国で認められるようになり、それらのマイノリティに対する暴力が減少していったことが論じられている。そして、動物に対する暴力とそれを減少させた「動物の権利」運動も、この第7章で取り上げられている。 『暴力の人類史』は様々なテーマが少しずつ取り上げられている一方で、それぞれのテ

    スティーブン・ピンカーによる「動物の権利運動」論- 道徳的動物日記
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