化学調味料は近来非常に宣伝されているが、わたしは化学調味料の味は気に入らない。料理人の傍らに置けば、不精からどうしても過度に用いるということになってしまうので、その味に災いされる。わたしなどは化学調味料をぜんぜん調理場に置かぬことにしている。化学調味料も使い方でお惣菜的料理に適する場合もあるのだろうが、そういうことは純粋な味を求める料理の場合には問題にならない。今のところ、純粋な味を求める料理のためには、なるだけ化学調味料は使わないのがよいと思う。上等の料理、最高の料理には、わたしの経験上化学調味料は味を低め、かつ味を一定していけないようだ。こぶなりかつおぶしなりのだしで自分流に調味するのがいちばんいい。 たとえ化学調味料がいいとしても、物にはそれぞれ千差万別の持ち味があるのだから、こればかりは人間の力ではどうすることもできないものだといえよう。それを化学調味料という一つの味で、日本料理・