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ブックマーク / note.com/gomiyouko (23)

  • 宮崎駿監督の全てを込めた映画『君たちはどう生きるか』(ネタバレあり注意)|五味洋子

    (宮崎駿監督の今作の苗字の表記は宮﨑で「﨑」は「たつさき」。環境依存文字で表示されない場合があるので、便宜上従来の文字で記す。) 監督・宮崎駿にとって前作『風立ちぬ』以来10年ぶりの長編映画という。そんなに経ったかと驚きつつ、以前にも増して宮崎駿らしさ全開の映画をわくわくと楽しんだ。 物語の舞台は戦時中の日。主人公は11歳の少年・牧眞人(まき・まひと)。夜空に響き渡るサイレンが不穏を告げ、一気に物語に引き込まれる。火災で病院が燃え、眞人は入院中の母を喪う。作中年度からみて空襲ではないが、空襲を思わせる緊迫感があり、前作『風立ちぬ』との連続性が伺われる。火事か空襲か年代から考えないと解らないくらい、この映画は観客に理解させようとはしない。説明抜きでも解る人間でなければついていけない。鑑賞後の観客の評価が賛否に大きく分かれたのはそういう訳だ。 これまでの宮崎映画は画面に虹が出れば登場人物が「

    宮崎駿監督の全てを込めた映画『君たちはどう生きるか』(ネタバレあり注意)|五味洋子
  • ひろしまアニメーションシーズン2022|五味洋子

    広島市で開催された「ひろしまアニメーションシーズン2022」が終了して早くも1カ月が経った。思い返すと夢のような時だった。 「ひろしまアニメーションシーズン」は広島市がこの2022年夏から新たに始めた「ひろしま国際平和文化祭」の一翼を担うイベント。 「ひろしま国際平和文化祭」は広島市民のために設けられた芸術イベントで、略称は「ひろフェス」。8月1日からほぼ1カ月に渡り広島市内各地で繰り広げられた。主催は「ひろしま国際平和文化祭実行委員会」。 「平和の種をまき、次世代を育てる」をコンセプトに、音楽の「ひろしまミュージックセッション」とメディア芸術の「ひろしまアニメーションシーズン」の二柱からなり、今夏の「ひろしまアニメーションシーズン2022」は8月17日(水)から21日(日)の5日間、JMSアステールプラザをメインに市内各所で行われた。 元々広島市には1985年に始まる「広島国際アニメー

    ひろしまアニメーションシーズン2022|五味洋子
  • 『どれみ』ファンから見た『どれみと魔女をやめた魔女』|五味洋子

    同人誌『詳説?どれみと魔女をやめた魔女』(2003年12月、どうかんやまきかく発行)に寄稿した文章の再録です。文中の事項は当時のものです。 『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』第40話である『どれみと魔女をやめた魔女』は『おジャ魔女どれみ』シリーズの中でも特異な話だ。そもそも『どれみ』シリーズの魅力はどこにあるだろう。端的に言うならば、魔女見習いというアイディアを根幹に日常とファンタジーが程良く混在する、明るく大らかな世界観。多彩なストーリーと、個性豊かなキャラクターたち。『美少女戦士セーラームーン』以来のお家芸的な変身(お着替え)シーンと魔法の使いどころによる視覚的心理的満足感(カタルシス)が上げられるだろう。 ところがこの『どれみと魔女をやめた魔女』は、これらの魅力の殆どと無関係に存在する。どれみ以外のレギュラーメンバーは顔見せ程度にしか現れず、作中で変身もせず魔法も使われない。キャラク

    『どれみ』ファンから見た『どれみと魔女をやめた魔女』|五味洋子
  • 大人にこそ刺さる傑作『スモールフット』|五味洋子

    ※『ビランジ』43号(2019年2月発行)に寄稿した文章の再録です。文中の事項は当時のものです。 2018年は海外アニメーション映画の注目作が多く公開された年だった。前号でも取り上げたように『ぼくの名前はズッキーニ』をはじめとする人形アニメーション(ストップモーション)映画、2D及び3DCGによるアニメーション映画。その多くは差別や偏見、他者との融和といった今日的な問題をテーマとしており画期的だ。ただ、海外アニメーション映画においてはディズニー/ピクサー以外の作品の劇場公開は少なく、注目作でありながら劇場でなくネット公開やDVD発売に回ってしまう作品も多いのが気がかりではあるが、それでも国内にいながらにして海外の諸作品が見られるこの傾向が今後も継続されることを心から願うものだ。 さて、今回はそんな活況を見せる海外アニメーション映画の中から、昨年の3DCGアニメーション映画の傑作、『スモール

    大人にこそ刺さる傑作『スモールフット』|五味洋子
    akakiTysqe
    akakiTysqe 2021/10/20
    ※『ビランジ』からのアニメレビューの再録は今回で一区切りとなります。
  • アニメーションという魔法(イリュージョン) 『イリュージョニスト』|五味洋子

    ※『ビランジ』28号(2011年9月発行)に寄稿した文章の再録です。文中の事項は当時のものです。 1997年のアヌシー・アニメーション・フェスティバルで短編部門グランプリを受賞し、翌年の広島国際アニメーション・フェスティバルでもグランプリを得た『老婦人とハト』のブラック・ユーモアで我々を大いに喚起し、2002年の初長編『ベルヴィル・ランデブー』のパワフルでユーモラスで物悲しい大人のアニメーションでまたも我々を大いに魅了したフランスのシルヴァン・ショメ監督の新作長編アニメーション、それが『イリュージョニスト』だ。 この作品は『ぼくの伯父さん』等で知られる映画監督で俳優のジャック・タチが愛娘に遺したシナリオ「FILM TATI No.4」を元にしている。タチの娘ソフィアは同じフランスのショメ監督に全幅の信頼を寄せ、半世紀に渡り眠っていたそのシナリオを託したという。かつて詩人ジャック・プレヴェー

    アニメーションという魔法(イリュージョン) 『イリュージョニスト』|五味洋子
    akakiTysqe
    akakiTysqe 2021/10/15
    見た目もストーリーもシークエンスやモチーフもスタジオジブリ、特に宮崎駿監督作品のそれに似たものが増えている
  • 『ウォーリー/ WALL・E』私見|五味洋子

    一作毎に進境著しいピクサー社の新作長編『ウォーリー/ WALL・E』。 今回は遥か未来の地球を舞台に、壮大な廃墟を描き出してみせた。人間たちがゴミだらけの地球を捨て大型ロケットで宇宙に出てしまった無人の地球。後を任されたのはゴミ処理ロボットたち。その最後の1台であるウォーリーは連日せっせとゴミを集め、キューブに固めて処理し続けている。 彼の相手は小さなゴキブリ型ロボット1匹のみ。このゴキブリ君は形状記憶素材で出来ているらしく、うっかりウォーリーのキャタピラに踏まれても次の瞬間ピョンと元に戻ってみせる。アニメ史上最高に可愛いゴキブリだろう。そしてこの、有機物ではないにも関わらず生きている存在(ウォーリー)と、小さな昆虫のコンビは、そのままディズニーの古典『ピノキオ』の、生ける木の人形ピノキオとコオロギのジミニー・クリケットを思わせる。ピクサー社の作品に再々見られる、かつての名作への敬意はここ

    『ウォーリー/ WALL・E』私見|五味洋子
  • 海辺の生と死 ――『崖の上のポニョ』|五味洋子

    ※『ビランジ』22号(2008年9月発行)に寄稿した文章の再録です。文中の事項は当時のものです。 この夏、『ハウルの動く城』以来4年ぶりとなる宮崎駿監督の新作長編『崖の上のポニョ』が公開された。 宮崎監督の長編は『もののけ姫』以来『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』と、絵も動きも年々リアル志向を増し、緻密な描き込みと情報量を持った画面は限界とも言えるほど精密さを強めていた。その画面密度に驚嘆しつつも、かつての『未来少年コナン』等の大らかな漫画映画的世界を懐かしむ思いも私の内には根強くあった。 ところが『ポニョ』で、宮崎監督は従来のCG表現を排し、徹底して手描きのアニメーション作りにこだわった。それまでの実写と見紛うばかりの精密な背景から、絵風の筆やクレヨンのタッチを残した背景に変え、画面で動くものは基的にアニメーターの手で描かれることになった。 そのルーツは、精密なジブリアニメ大作の

    海辺の生と死 ――『崖の上のポニョ』|五味洋子
  • 不朽の傑作『わんぱく王子の大蛇退治』|五味洋子

    同人誌『VANDA』21号(1996年6月発行)に寄稿した文章の再録です。文中の事項は当時のものです。 『わんぱく王子の大蛇退治』は昭和38年(1963年)公開の、東映動画6作目の長編にあたり、『白蛇伝』『少年猿飛佐助』『西遊記』『安寿と厨子王丸』『シンドバッドの冒険』に次ぐ作品である。『わんぱく』はこれまでの作品に見られたリアルな劇映画指向の傾向を一掃し、漫画映画的な破天荒な面白さと豊かな情緒あふれる画期的な作品となった。東映長編の最高傑作と明言する向きも多く、また『ゴジラ』等でお馴染みの伊福部昭の音楽、クライマックスのオロチ退治の迫力でアニメファンばかりか怪獣特撮ファンにも広い人気を誇っている。 『わんぱく』が画期的な作品たり得たのは、作画・演出のスタイルの斬新さと共に、当時の東映動画の制作事情が大きく影響していた。当時の東映動画は労働組合運動の高まりによって、それまでパート毎に分化

    不朽の傑作『わんぱく王子の大蛇退治』|五味洋子
  • 『ルパン三世 カリオストロの城』― 山田康雄氏追悼を込めて|五味洋子

    同人誌『Vanda』18号(1995年6月発行)に寄稿した文章の再録です。文中の事項は1995年当時のものです。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 年3月、声優の山田康雄氏が死去された。死因は脳出血、享年六十二歳。代表作はやはり『ルパン三世』。折しも十年ぶりの劇場用新作が今夏公開予定中、山田氏が声をアテた予告編は既に全国に流れ、編の録音に入る寸前だったという(※2021年的注:映画第5作『くたばれ!ノストラダムス』のこと)。通称『旧ルパン』と言われるTV第一作の放送から既に二十数年、その間ほぼ一貫してルパンの声を演じ続けて来た氏への追悼を込めて、今回は『ルパン』シリーズの最高傑作『ルパン三世 カリオストロの城』を取り上げよう。(私はシリーズの代表作は『旧ルパン』、最高が『カリオストロ』というスタンスです)。 『カリオストロ』が劇場に登場したのは昭和5

    『ルパン三世 カリオストロの城』― 山田康雄氏追悼を込めて|五味洋子
  • エバーグリーンの宝箱『パンダコパンダ』|五味洋子

    同人誌『Vanda』17号(1995年3月発行)に寄稿した文章の再録です。文中の事項は当時のものになります。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 『パンダコパンダ』が甦った。LD-BOXの発売、新装パッケージでのビデオレンタルの開始、そして書店には2冊の絵。『パンコパ』のオールカラー絵を作るのが夢だった私にはちょっとくやしくはあるのだけれど、とにかくこの状況は嬉しい。 我が家の子供達がもっと小さかった頃、近所の子供を集めて『パンコパ』のビデオをかけるのは、当に楽しいことだった。画面の中に丸ごとのめり込んで熱中する子供達。残念ながら封切当時既に大人になってしまっていた私は、そんな様子を見るたびに、もし子供の時に『パンコパ』と出会っていられたら、どんなに幸せだったろうと思う。 だから、この文を読んでいる方で小さいお子さんをお持ちの方、或いは親戚でも何でも

    エバーグリーンの宝箱『パンダコパンダ』|五味洋子
  • 『番外編 え!?タヌキとライオンの対決?』(2021年的注:『平成狸合戦ぽんぽこ』&『ライオンキング』評)|五味洋子

    『番外編 え!?タヌキとライオンの対決?』(2021年的注:『平成狸合戦ぽんぽこ』&『ライオンキング』評) ※同人誌『Vanda』16号(1994年12月発行)に寄稿した文章の再録です。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 この夏の映画界は「狸とライオンの決戦」だったそうだ。かたやジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』、かたやディズニーの『ライオンキング』。さて、その結果は如何? 『ライオンキング』については、表面的に見れば、絵はきれい、音楽は親しみやすく感動的、物語も分かりやすく、ファミリー映画とすればいい線をいっていると思われるけれど、根的なところで問題を抱えているような気がしてならない。というか、とてもディズニールネッサンスの一翼を担うような優れた作品には思えないのだ。 だいたい、アメリカ人というのは、どうしてこうも脳天気なのだろう。世評高い『美女と野獣』(

    『番外編 え!?タヌキとライオンの対決?』(2021年的注:『平成狸合戦ぽんぽこ』&『ライオンキング』評)|五味洋子
  • 少年マンガの王道 『DRAGON QUEST ダイの大冒険』を、もう一度!?|五味洋子

    同人誌『Vanda』15号(1994年9月発行)に寄稿した文章の再録です。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 今回は健全な『Vanda』読者諸氏が知らないようなTVアニメの話をしましょう。 と言っても、題名からお判りのように、これはメディアミックスな広がりを見せるドラクエシリーズの一篇で、原作は今も『週刊少年ジャンプ』に連載中と言えば、思い当たる人もいるのではないだろうか。(※2021年的注:原作は1989年~1996年に『週刊少年ジャンプ』に連載) さて、作『ダイの大冒険』は、1991年10月から46に渡ってTV放映されたもので、現在では、TVシリーズ2を1巻に収めたビデオが、誕生、旅立ち、死闘、聖戦、勇愛、宿命の各編に分かれて発売されている。 ところで、通常欄で取り上げる作品は、読者の方々に、出来るだけ機会を作って見てほしい、出来ればLDを購

    少年マンガの王道 『DRAGON QUEST ダイの大冒険』を、もう一度!?|五味洋子
  • 正統派漫画映画の快作!『どうぶつ宝島』|五味洋子

    同人誌『Vanda』14号(1994年6月発行)に寄稿した文章の再録です。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 『どうぶつ宝島』は、昭和46年(1971年)公開の東映長編で、東映創立二十周年記念のタイトルが冠されている。長編動画の黄金時代の棹尾を飾る作品として、『わんぱく王子の大蛇退治』『太陽の王子 ホルスの大冒険』『長をはいた』と共に東映四大長編とも称されているが、これらに比べるとやや評価が低く、かつてアニメ関係のムックが山程出版された時代にも、この『ど宝』に関してはただの一冊も特集が出なかったのも残念なところ。ここで一押し、『ど宝』の魅力に迫ってみよう。 『ど宝』の魅力、それはスチーブンソンの原作を元としながら、徹底して抱腹絶倒、「お子様向き漫画映画」の王道をゆく痛快娯楽作品に仕上げていることにある。 スタッフタイトルに「アイディア構成=宮崎駿」

    正統派漫画映画の快作!『どうぶつ宝島』|五味洋子
  • プラムフィールドの虹 『若草物語 ナンとジョー先生』|五味洋子

    同人誌『Vanda』13号(1994年3月発行)に寄稿した文章の再録です。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 来年の名作劇場は『愛の若草物語』の続編だ、と聞いた時、これは絶対に見るぞと心に誓うものがあった。 『愛の若草物語』は、ルイザ・メイ・オルコットの有名な少女小説のアニメ化で、1987年(昭和62年)の名作劇場で一年間放映されている。 『愛の若草物語』は私に、TVアニメで一番重要なことはキャラクターの魅力である、という当たり前のことを改めて思い知らせてくれた作品だった。メグ、ジョー、ベス、エイミーの、それぞれ容姿も性格も違う四姉妹、とりわけ、小説家志望で男まさりの次女ジョーの存在感とその魅力は強烈だった。 そして今回の『若草物語 ナンとジョー先生』は、タイトルからも分かる通り、成長し、結婚して先生となったジョーを中心にした物語だという。 日曜の夜は忙

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  • キラめく青春の一頁 劇場版『エースをねらえ!』|五味洋子

    同人誌『Vanda』12号(1993年12月発行)に寄稿した文章の再録です。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 作は少女マンガ『エースをねらえ!』の三度目の映像化作品である。 『週刊マーガレット』連載の原作の圧倒的な人気を背景に、1973~74年にかけてTV化された最初の『エースをねらえ!』は、原作とは異なる展開の物語となりながらも、再放送でメインターゲットの少女以外の広範囲な層を巻き込んで爆発的な人気を得、1978年にはより原作に忠実な形で作り直すという異例の『新・エースをねらえ!』が製作された。が、旧シリーズの中心メンバーであった演出の出﨑統、及び作画の杉野昭夫コンビは、当時『宝島』を手がけていたために『新・エース』には参加せず、旧作の華麗で力強いタッチに魅せられていたファンにはビジュアル面で大きな不満を残すことになったものの、視聴率的には一応の成

    キラめく青春の一頁 劇場版『エースをねらえ!』|五味洋子
  • 『未来少年コナン』|五味洋子

    同人誌『Vanda』11号(1993年9月発行)に寄稿した文章の再録です。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 『未来少年コナン』。1978年、NHK-TVで初放映。今回の原稿のために資料をあたってみて、すでに15年前の作品と知り、正直、驚いた。 『未来少年コナン』。言わずと知れた、宮崎駿の初監督作品。宮崎駿の輝かしい原点。<処女作には作家の全てが表れる>の言葉通り、『コナン』には宮崎駿の全てが込められている。『コナン』は、初めて演出家として自分自身の<場>を得た宮崎駿が、みずみずしい感性と、長年蓄え続けたモチーフ、テーマ、技術の全てを注ぎ込み、精魂込めて<世界>を丸ごと作り上げた、記念碑的な作品だ。 『コナン』は、当時の宮崎駿の溢れんばかりの意欲と夢を伝えて、今も熱い。 ところで、『コナン』てどんなアニメ?と聞かれたら、何と答えよう。 まずは、とにかく面

    『未来少年コナン』|五味洋子
  • アルムの風に包まれて―TV界を変えた『アルプスの少女ハイジ』|五味洋子

    同人誌『Vanda』10号(1993年6月発行)に寄稿した文章の再録です。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 『アルプスの少女ハイジ』がTVに登場したのは、昭和49年(1974年)。既に20年も昔のことだ。しかし、その映像は今なお新鮮に、私たちの心に訴えかけてくる力を持っている。 『ハイジ』が登場したのは、高度経済成長にかげりが見え始め、自然破壊が社会問題化し始めた、そんな頃だった。人々は今の社会に疑問を持ち始め、当に人間らしい暮らしとは何かを模索し始めていた。 そんな時代を背景に、美しい自然と豊かな人物の描写によって、当の人間の幸せとは何かを静かに語りかけてくる『ハイジ』は、人々に圧倒的な好評をもって受け入れられていった。 それはまた、それまで『太陽の王子 ホルスの大冒険』『(旧)ルパン三世』『パンダコパンダ』といった、早過ぎた傑作を送り出し続けて

    アルムの風に包まれて―TV界を変えた『アルプスの少女ハイジ』|五味洋子
  • ジョン・シルバーに捧げられた物語    ―『宝島』は男の美学の結晶だ―|五味洋子

    同人誌『Vanda』9号(1993年3月発行)の『宝島』特集に寄稿した文章の再録です。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 監督・出﨑統、作画監督・杉野昭夫。『宝島』は、アニメ界に燦然と輝く、いわゆる出﨑・杉野コンビによるTVシリーズの一篇であり、傑作である。 『宝島』を傑作たらしめている要素の一つには、この作品があまりにも有名なスティーブンソンの原作を骨格に、大胆にアレンジされ、枝葉のエピソードや、後半の島での展開など、ほとんどオリジナルに近い波乱万丈のドラマに仕上がっていることが上げられる。(脚は山崎晴哉と篠崎好)。 そして何と言っても大きいのは、主人公ジム少年の周囲に配されたキャラクター群が、いずれも人を引き付けて止まない魅力を備えた人物であり、それぞれ独自の輝きを放っていることが上げられる。 『宝島』はまず、何よりもキャラクターが立っている作品な

    ジョン・シルバーに捧げられた物語    ―『宝島』は男の美学の結晶だ―|五味洋子
  • 追悼 森康二『森康二さんのご逝去に寄せて』|五味洋子

    同人誌『Vanda』8号に寄稿した文章の再録です。不世出の名アニメーター森康二氏のご逝去(1992年9月4日)を受けて編まれた追悼特集から。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 「祝!『わんぱく王子の大蛇退治』新LD化!!」―編集部から今後の予定を聞いていたので、来るべき東映動画特集のタイトルはこれでいこう、と思っていた。それが……。 9月4日、森康二さんが亡くなられた。享年67歳。まだまだ早過ぎる死だった。新聞等に発表された直接の死因は肝不全だが、実際はガンだったという。そしてそれを周囲の人達は皆知っていたという。亡くなられる少し前、ご家族は揃って外国旅行に出掛けられ、宮崎駿さんは『紅の豚』制作中という多忙な時期にも拘わらず森さんの画集『もりやすじの世界』を自主出版された。全て、覚悟の上のことだった。 そして、『紅の豚』(注:1992年7月公開)の、妙に

    追悼 森康二『森康二さんのご逝去に寄せて』|五味洋子
  • 『太陽の王子 ホルスの大冒険』特集より『あなたは わたしの 青春そのもの』|五味洋子

    同人誌『Vanda』5号(1992年2月発行)の『太陽の王子 ホルスの大冒険』特集に寄稿した文章の再録です。『Vanda』は(故)佐野邦彦氏と近藤恵氏が編集発行した同人誌です。 『ホルスの大冒険』を初めて見た時の感激は今も忘れない。おそらく一生忘れないだろう。 力強く語られるテーマ、画面を圧する、凄まじいばかりのモブシーン、大胆で象徴的で、あふれんばかりの意欲と熱気にみちた、今まで見たこともないー。アニメーションでこんなことが出来るのか!という衝撃は、まざまざと残っている。 数ある東映長編の中でも『ホルス』は格別だ。『わんぱく王子の大蛇退治』も『ホルスの大冒険』も『長をはいた』も『どうぶつ宝島』も甲乙つけ難く好きで、それぞれに愛着があるが、そんな中でも『ホルス』が格別なのは、やはりそのドラマ性に心ひかれるためだろう。 『ホルス』には命を救われたことがある。と言ってもたいした話ではなく

    『太陽の王子 ホルスの大冒険』特集より『あなたは わたしの 青春そのもの』|五味洋子