映画のキーワードは「体験」 ──今年、全国の映画館でのリバイバル上映を決めたのは、戦後80年への思いからですか? 片渕須直監督(以下、片渕) そこが起点ですが、観ていただくだけなら配信などでも可能です。でも、映画館で「体験」していただきたいという思いがあったからです。 この作品は、戦前から戦中、さらに昭和21年までの広島・呉に生きた人々を通して、そこにあった日々を描く映画です。 「戦争を描く」というと、空襲とか原爆とか終戦の日だとか、ある特別な出来事のあった日を描くことを主にすることが多いのですが、そこに至る日々、それからの日々まで含めた、時の流れそのものを描きたい。そして、その流れる時を、主人公すずさんのすぐとなりで体験していただきたい。「体験」こそこの映画のキーワードです。 音響も含めた劇場の「空間」が、そうした「体験」を作り出す大きな要素になるのではないかと思っています。2016年の
