書評を2・3年さぼっていたら,積読ならぬ書評待ちの書籍の山が数十冊単位になってきて部屋を完全に圧迫しているので,いい加減手を付けることにした。書評待ちの山は乱雑に積み上げていっている(しかも度々崩落して順番が入れ替わっている)ため,書評順は読んだ順とは無関係である。 『西洋美術史』(秋山聰・田中正之監修,美術出版,2021年) 大部の西洋美術史の通史。当代一流の学者を集めて書かれた概説書であり,サイズが大きいので掲載されている図版も大きい。これで3,800円はお値段もがんばっている。一般人が西洋美術史の議論をする際には,とりあえず典拠はこれと言えるという意味で,持っていて損はない一冊。欲を言えば,あとがきで秋山聰先生本人が「デューラーも《1500年の自画像》等において未完了過去形で署名しているように,本書は現時点での研究成果の最新版でしかなく,決定版ではない」と書いているように,10年に一