2016年末、高知県香美市物部町の中津尾という集落から「人がいなくなった」という話を聞いた。香美市役所物部支所から高知県道安芸物部線や林道などを経由して車で約1時間。道路には落石や倒木が目立ち、それを取り除かないと集落にはたどり着けない。2015年の国勢調査を基に高知県が5月1日発表した集落調査によると、中津尾は「2世帯2人」が暮らしていることになっているが―。「人がいなくなった」集落を訪ねた。 香美市物部町の中津尾は地域の中心部、大栃地区から直線距離にして6キロ足らずだ。とはいえ、大栃から行くにしても、高知県道安芸物部線を南下して高知県香南市にいったん入った後、林道経由で高知県安芸市も抜けなければならない。行けども行けども山ばかり。そんな道程でやっと集落が見えてくる。 中津尾出身の小松英延さん(69)=香南市香我美町徳王子=に4月下旬、案内してもらった。英延さんは中津尾にあった大栃中学校