選択の多い女性の人生に、決断は欠かせないもの。各界の第一線で活躍する先人たちは、どんなターニングポイントを迎えてきたのか。科学の視点から人物を読み解くプロ、脳科学者の中野信子さんにお話をうかがいました。 常に目標に向かって、息をつめて走る短距離走の連続のような人生。そんな生き方を変えたかった 医学博士課程の学生として、学位がとれるのか否かの瀬戸際にいた30代初め。自分にそれだけの能力があるのか、毎日揺れ動くような状況でかなりナーバスに過ごしていました。自分で選択したことだから逃げられない。苦しかったですね。 研究テーマは、人間の認知に関わる音声言語と音楽について。先生は今の私よりも若い方でしたが、解析方法、論文の読み方など、研究のいろはだけでなく、学問の根幹にある〝学ぶ〟という姿勢まで教えていただいたように思います。 当時はメディアに学者が出始めた時代。今でもときどき思い出すのは、先生が「