龍應台(天野健太郎訳)『台湾海峡 一九四九』(白水社、2012年) 龍應台の「台」は台湾の「台」である。しかし、これにはある種の「よそ者」感覚がまとわりついていると自身で記している。なぜ親はこのような名前を付けたのか? 一時滞在のつもりで来たこの土地でたまたま彼女が生まれたのを記念するため、ということらしい。ある世代には同様の意味合いを帯びた名前の人が多々見られるという。例えば、ジャッキー・チェン。彼の本名は陳港生。「港」は香港の「港」である。彼の親もまた流浪の果てに香港へたどり着いたという背景が息子の名前からうかがえる。 著者は台湾南部、高雄の近郊に生まれた。しかし、小学校に通い始めて気付く──クラスの中で自分はただ一人の「よそ者っ子=外省人」であることに。自分が住んでいるのはいつ引っ越すか分からない公務員住宅。でも、台湾人には祖先代々の家があり、清明節にお参りするお墓もちゃんとある──