今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。 【今日のことば】 「誰れでもかまわない人間をなめ殺しに」 --草野心平 詩人の草野心平は、蛙を題材とした詩を多く書いた。そこでは、作者が蛙と一体化しているようでもあり、蛙の目を通して世界を眺めているようでもあった。 具体的に、詩集『第百階級』の中に書かれた物語を追ってみてみよう。現代日本の蛙は、恋や寂しさを語るかと思うと、子供らに追いかけられる。18世紀イタリアの蛙はボローニャで生理学者の解剖の対象となり、ベトナム戦争下のソンミ村の蛙は戦争に巻き込まれ半死人の下敷きとなる。そしてついには、ある日、目を開いたヒキガエルが竹藪の中を歩きだし、「何処へ?」という問いかけに、掲出のことばで答えるのである。一見、とぼけた味わいの底に、身震