今回、報告するのはTBSラジオ・崎山敏也氏の実践である。彼は記者であり、同社の過去音源など、アーカイブの整備も兼務している。その立場を生かして、過去のニュース音源を活用した番組の制作や番組内での解説を手がけてきた。アーカイブのラジオ活用のケースはさまざまあるが、長年、ジャーナリズムの現場での実践にこだわってきた人物は少ない。 崎山の実践には、狙いが2つある。 1つは、社会的出来事は時間がたつと、特定のイメージを帯びて人々の記憶の中に固定化する。一般的に、固定化の過程で、出来事本来の複雑な実情は削り落とされる。そこでアーカイブ音源を使って「記憶の固まり」を解きほぐし、複雑さを取り戻すことで、いまの時代において出来事を検討しやすくすることだ。 もう1つは、社会的出来事に対して思い込み(特定のイメージ)を植えつけ、人々に記憶させることにメディアは加担する場合があり、その深刻さに気づくことである。
![放送研究と調査](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/e6450566aa3c06061ed2c3736778855182353068/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.nhk.or.jp%2Fbunken%2Fimg%2Fogimg.png)