「その研究は何の役に立つのか」「我々はなぜ心を持つのか」──。 こうした問いに、現在ベストセラー街道を激走中の好著『ディープラーニングと物理学』著者が真摯に向き合う特別エッセイをお届けします。 不思議だと思う心 化学物質の生態系への悪影響を『沈黙の春』という著作で発表し有名になった生物学者に、レイチェル・カーソンという女性がいますが、彼女の執筆した別の著作に『センス・オブ・ワンダー』という短いエッセイがあります。 この著作では自然界に見られるさまざまな物や現象──花や苔、夜空の星々や唸る荒波など──を見たり触ったり聞いたりした時に感じる、ある種の安らぎや驚き、さらにはそこから生じる「不思議だと思う心」を総称し、センス・オブ・ワンダーと名付けています。 物理学や数学を勉強していると、しばしば「何のためにそんなことをするのか」という素朴な疑問を投げかけられることがあります。 この手の質問にうま