「人種主義(Racism:レイシズム)」は歴史上どのような過程を経て登場してきたのか?西洋における人種主義の歴史と全体像を丁寧に描いた一冊。 「人種主義」は現代においては「外国人嫌悪(Xenophobia:ゼノフォビア、クセフォビア)」とともに表面化してくることが多いが、歴史的には、古代から様々な民族集団・共同体で見られる「外国人嫌悪」や「自民族(自文化)中心主義(Ethnocentrism:エスノセントリズム)」と「人種主義」の登場とは直接の関係は見られない。 フレドリクソンは、「人種主義」の起源を十五世紀のスペインに求めている。宗教的寛容と多文化共存が両立した中世スペイン社会はペストの流行に基づく社会不安や市場経済の進展による既存秩序の動揺、イスラーム勢力との対外戦争、統一国家の建設を背景とした国威発揚など様々な要因からユダヤ教徒を「血の浄化」という血統主義に基づく差別・排除を行う「宗
昨夜、Facebook上でお騒がせいたしました注目の新刊はこれでございます。間違いなくHONZメンバーが先制攻撃をしてくると思われるため、決死の「新刊超速レビュー」で紹介することにいたしました。 なにしろ本書は全編にわたった広島弁・やくざ弁で構成されるという奇跡のキリスト教史。東映のヤクザ映画を見ていた年代の人々にも、そうでない人々にも驚愕の一冊であります。いやはやスゴイです。なんせね、目次からしてスゴイ。 第1章 やくざイエス 第2章 やくざイエスの死 第3章 初期やくざ教会 第4章 パウロ–極道の伝道師たち 第5章 ローマ帝国に忍び寄るやくざの影 第6章 実録・叙任権やくざ闘争 第7章 第四回十字軍 第8章 極道ルターの宗教改革 終章 インタビュー・ウィズ・やくざ 帯には「あいつら、言うてみりゃ人の罪でメシ食うとるんで」のキャッチ!「エンタメで学べる画期的キリスト教入門」とありますが、
2014-02-23 キリスト教の良書とトンデモ本の越えられない壁 前回の続き。 土曜日には洗礼のための勉強会に行き、日曜日はミサに行く、という習慣ができてくる。こうなると歯止めが利かない。初めてヲタの世界に触れたヲタのように、何でもかんでも吸収しようとする。本屋やブックオフでキリスト教の棚に張り付く。キリスト教入門的な本を買い漁る。そして初めて、世間にはキリスト教に関するトンデモ本が溢れていることに気づく……。橋爪大三郎・大澤真幸著『ふしぎなキリスト教』や島田裕巳著『キリスト教入門』などは一見無害なだけかえって悪質だ。しかし、僕が憤慨したのは適菜収著『キリスト教は邪教です!』だった。 この本、一応ニーチェの『反キリスト』の現代語訳だと主張するのだが、付加部分が多過ぎるし毒を含みすぎだ。そもそもタイトルからして『キリスト教は邪教です!』なのだから、クリスチャンは手に取ることもしないだろうし
『危険な宗教の見分け方』を読んだ。 (008)危険な宗教の見分け方 (ポプラ新書)posted with amazlet at 14.02.07田原総一朗 上祐史浩 ポプラ社 売り上げランキング: 207,448 Amazon.co.jpで詳細を見る 本書は田原総一朗と上祐史浩の対談をまとめたものである。上祐氏というと、現在30歳より上くらいの方であれば説明の必要もないくらいの存在だと思われるのだが、現在ではテレビなどでその姿を見かけることがないので若い方々の間では既に知名度が相当低くなっているのかもしれない。 上祐氏は1969年福岡県生まれ。早稲田大の附属高校である早稲田大学高等学院から早稲田大学、同大学院と進む。早稲田では理工学部で情報通信を専攻していたが、その一方で大学院時代の1986年に麻原との出会いを果たしている。その後、宇宙開発事業団に就職(これは私は知らなかった)するが、ほど
オックスフォード大学の教科書(Very Short Introductions)で、専攻問わず大学新入生の必読書。 片方の肩を持つのではなく、「そもそも何が問題となっているか」を整理する。科学と宗教は、とかく対立するものとして見られるが、そうではないことが分かる。むしろもっと根が深い。「正しいか、正しくないか」ではなく、争点が政治にあることが問題なのだ。 定番のテーマであるガリレオ裁判、進化論に対する理解の変遷、そしてID(インテリジェント・デザイン)説をめぐる論争や、ドーキンスの利他性の問題を採り上げ、科学哲学と宗教的含意の議論をまとめている。 歴史の俎上に乗せてしまうと、科学と宗教は驚くほど似通っていて、対立というよりも、補完・強化する関係になっていることが分かる。先進的な科学者v.s.保守的な教会という構図はドラマティックだが、現実は違う。どちらも頑迷さと寛容性があり、どちらにも知的
宗教を嫌う日本人 世界がわかる宗教社会学入門 (ちくま文庫) 日本人は宗教が嫌いだ。どの宗派がというわけではなく宗教全般が嫌いなのだ。あなたは何を信じますかと聞かれるとびくっと肩が震えてその人とは距離を置きたくなってしまう。なんとなく怪しいぼんやりと危ないちょっぴり怖い。日本人の宗教観はそんなところだろう。 それではいけないと気づいた。いまや時代は全世界グローバルオーバーネットワークであらゆる人々と付き合っていかなければいけない。人を知るには彼らのバックグラウンドを理解する必要が出てくる。宗教は彼らの価値観の根底を担っているのだ。学ばねば。 世界中の宗教のことをざっくり書いてある文庫本が欲しいなといつもの生協に行った。簡単に見つかるわけないかと思いかけたその時ついに僕は発見した。それは言い過ぎたが宗教で背表紙検索をかけていたら引っかかった。宗教社会学入門。東工大の講義のレジュメを本にした形
ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録 作者: 佐藤典雅出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/01/18メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 23回この商品を含むブログ (14件) を見る著者の佐藤氏は、米国駐在の銀行員のお父さんを持ち、9歳から大人になるまで、ほとんど米国で生活されていた方です。この本には、その中でお母さんが米国のエホバの証人の勧誘を受けて信者となり、家族全員がバプテスマと呼ばれる洗礼を受け、後に佐藤氏の「脱洗脳」をきっかけに妹さん以外が脱会するまでの経験が書かれています。「エホバの証人」というと、冊子を配って勧誘している宗教団体というイメージしかありませんでしたが、この本を読んでその独自の考え方、ライフスタイルを知しました。それは以下のようなものです。 「エホバの証人」は聖書研究会で、新規会員を勧誘す
石原都知事は東北大震災について「日本に対する天罰だ」と言い放って顰蹙を買った。あまり知られていないことだが、都知事は名古屋の減税党を引き合いにだしながら、財政破綻しつつある国であるにも関わらず、国民はまったく理解していない、それゆえに天罰が下ってもしかたがないと言っていたのだ。 『国債クラッシュ』は日本にその本物の天罰が下るプロセスを解説した本だ。すなわち国債暴落、株安、円安のトリプル安と日本の財政破綻である。前半は来年12月を想定したシミュレーション小説、後半はその解説である。著者の立ち位置はジャーナリストのそれであり、経済学者などとは一線を画す。 すなわち、国債の95%は日本人がもっているから大丈夫だという静的な分析をする立場ではなく、マーケット次第でいつでも暴落はありうるという、現実を直視した立場である。しかも著者は「マーケットには現実を正確に把握する力もなければ、結果を見通す眼力も
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