ドアに嵌められたガラスには「写真とプリント社」なる社名が小さく書かれていた。ここしばらく逡巡もしていたけれど結局は、フィルム式のカメラで写真を撮ることに固執しようと決めた私なら、このドアを開けないわけにはいかない、そう思った。 土佐堀川に面したビルの3階。まるで発光しているみたいに眩しい、白い部屋にて、ある会報に載せる、ホテルについての短い文章に添えたい鍵の写真をプリントしてもらう。ルームナンバーが記された、透明な長方形のキーホルダーの付いている鍵を、くすんだピンク色の絨毯が敷かれたホテルの廊下に置いて撮った写真だ。翌日、仕上がり時間を少し過ぎて行ってみると、そのキーホルダーの曖昧な透明感がとても綺麗にあらわされた仕上がりで、嬉しかった。 が、後日、このコラムを書くために2、3の質問をしに訪れたときに、[mogu camera]はフィルムだけに拘っているラボではないと聞き、それは少々意