歴史学の通説は、文書や遺物など史料から得られた知見を積み上げて構築されて来たと素朴に思い勝ちだが、残念なことにそうでは無い。日本の左翼の歴史家はマルクス史観に沿うようになっていたはずだと言う思い込みから近現代史であれこれ断罪してきたし、韓国の民族主義的傾向の強い歴史家*1も日本の朝鮮半島統治が否定的な結論が維持されるように論を組み立てている。 中公新書の『日本統治下の朝鮮 - 統計と実証研究は何を語るか』は、イデオロギーありきの歴史見解に疑問を感じて来た朝鮮半島を専門とする開発経済学者の著者が、それを批判するこれまでの研究を一般向けに整理したもので、実証的に何が言えるのかを示したものだ。岩波新書に同名の絶版本があるが、それに対する批判となっており、数字を挙げて左翼思想に基づく通説を検証し否定していっている。 日本の朝鮮半島統治は農業に限らず工業においても経済的発展をもたらした一方、日本が朝
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