20キロはある鉛板を背負いビル6階分の階段を一気に駆け上がる。首からぶら下がる線量計がけたたましく鳴り、白く曇る全面マスクが視界を遮る。気温30度以上。呼吸が乱れる。 「奴隷みたいな扱いが悔しかった」。長崎県の中山洋介さん(40代)=仮名=は昨年7月から約40日間、東京電力福島第1原発で働いた。鉛板は1号機の建屋内に放射線を(遮蔽、しゃ、へい)するために取り付ける。中山さんがその言葉を絞り出したのは、過酷な労働のせいではない。故郷に帰ってからのむごい仕打ちに対してだ。 中山さんによると、仕事を紹介されたF社から受け取った給料は日当1万1000円。約束では1万4000円のはず。そもそも事前の説明では、建屋には入らないと聞いていた。 食い下がる中山さんにF社は福岡県内の指定暴力団の名を挙げ、吐き捨てるように言った。「ヤクザが出てきても知らんばい」。F社が2社を通し労働者を送る2次下請けのC社は