水はみどろの宮 (福音館文庫 物語) 作者:石牟礼 道子 発売日: 2016/03/10 メディア: 単行本 おれは石牟礼道子を偉大な文学者にして「おばあさま」のような存在と思っている。しかし、全部読んだとは言い難い。むしろ、あまり読んでいないといってもいいかもしれない。『苦海浄土』だけで石牟礼道子は語れない。しかし、石牟礼道子は強烈だ。強烈というのも趣のない言葉だが、あまりいい表現が思い浮かばない。そして、その強烈な存在に相対するには力が要る。おれは何作か跳ね飛ばされている。 ようやく、『水はみどろの宮』を読むことができた。おれの中では格闘のようなものである。べつに難解な言葉で綴られているわけでもない、話はちょっと突飛だけれど、べつに人を拒絶するようなものでもない。ただ、その文章の質の高さに圧倒されてしまうのだ。 村の祭りが近づくと、舟着き場から離れて、流れて大きく曲がった河原に、ときど