タグ

ブックマーク / honz.jp (167)

  • 『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』 豆から生まれたメンタリティ - HONZ

    ある時をきっかけに、べ物のイメージがガラリと変わることがある。個人的に最も驚いたのは、はじめて四川料理の店で辛い麻婆豆腐をべた時のことだ。俺は今まで何をやっていたのだろうかという激しい後悔と同時に、麻婆豆腐というものへの理解が革命的に変わっていくことを実感した。 高野秀行にとっては、それが納豆であったのだろう。ある時、ミャンマー北部のカチン州での取材中にべた、日のものと全く変わらない納豆卵かけご飯。しかも現地の人たちは納豆のことを、業界人ばりに「トナオ」と呼んでいるではないか。さらにその後、タイ、ネパール、インド、ブータンといった他のアジア諸国においても、納豆もしくは納豆もどきのべ物と何度となく遭遇することになる。これを見逃す高野ではなかった。 書は「納豆の起源と変遷を解き明かす」というテーマを目的に、アジアの奥地から日の東北地方、はたまた固定観念の外側までを探検した一冊であ

    『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』 豆から生まれたメンタリティ - HONZ
    benzina
    benzina 2016/05/06
  • 『「病は気から」を科学する』心に治癒力はあるのか? - HONZ

    右にせよ、左にせよ、極端に意見が偏っている人ほど声がでかい。おそらく正解はその中間のどこかにあるはずだが、そこに位置するマジョリティ達は、自ら多くを語ろうとはしない。いずれにしても、両極のどちらが正しいのかという観点からは、何も生まれぬままに終わるケースが多いだろう。 近代以降の歴史を振り返ると、この手の問題はあらゆる領域に蔓延していた様子が見てとれる。そして医療の分野も、ご多分にもれずであった。合理的で還元主義的な、西洋医学の擁護者たちと、物質より非物質的なものを優先する代替医療や東洋医学の信奉者たち。言い換えれば、これらの対立は身体と心の代理戦争のようなものであったのかもしれない。 「代替」というネーミングからも推察される通り、長らく優勢を占めてきたのは西洋医学の方だ。しかし今、その歴史に変化の兆しが現れつつある。プラセボ効果における研究の進展をはじめ、医療における「心」の役割が解明さ

    『「病は気から」を科学する』心に治癒力はあるのか? - HONZ
  • 脳科学について知りたい人へ最初に渡したい一冊──『メカ屋のための脳科学入門-脳をリバースエンジニアリングする-』 - HONZ

    「メカ屋のための」とあるように、書はエンジニアに向けた脳科学である。 「なぜわざわざ特別にエンジニア向けに脳科学入門が書かれなくてはならないのか? 一般人向けに書けばいいではないか」と疑問を抱くかもしれないが、なるほどもっともな話ではある。 それはまず第一に、著者が東京大学工学部の機械系、情報理工学研究科、工学研究科で講義を受け持っている、機械系かつ生物学系の研究者であることに起因している。物理と工学が大好きで、それに反して生物に興味がない──むしろ嫌いな──エリート・エンジニアの卵らに生物よりの脳科学を教えなければならない著者がとった方法は、神経細胞が大脳にはいくつ、小脳にはいくつ、といった暗記科目的な形式ではなく、構造領域から機能領域へのアプローチ=リバースエンジニアリングを通して「脳って機能的にできてるんだなあ」と驚きを与える事だったのだ。 エンジニアは、どういうときに脳に感動を

    脳科学について知りたい人へ最初に渡したい一冊──『メカ屋のための脳科学入門-脳をリバースエンジニアリングする-』 - HONZ
  • 空へと誘う破格のチケット『グッド・フライト、グッド・ナイト』 - HONZ

    物心ついてから初めて飛行機に乗った時、それは間違いなく「体験」だった。飛ぶ前はもちろん、離陸した後もしばらくは落ち着かなかった記憶がある。 だが、今やフライトは「移動手段」である。乗った回数はそれほど多くないが、昔のワクワクや不安はすぐになくなり、窮屈さや眠りにくさばかりに目がいくようになった。映画や機内誌などで当たりに出会えればまだマシなのだが、基的には「はやく着かないかな」とばかり考えている。 そんな意識を塗り替えてくれたのが書だ。イギリスの航空会社、ブリティッシュ・エアウェイズのパイロットが空の素晴らしさについて存分に語り尽くした一冊である。ボーイング747を操縦して世界の空を飛びまわる著者は、ニューヨーク・タイムズなどの複数メディアに定期的に寄稿しているという文才の持ち主でもある。鮮やかに描き出される空の世界には、まだまだ知らない魅力がたくさん詰まっていた。 空を飛ぶことは「つ

    空へと誘う破格のチケット『グッド・フライト、グッド・ナイト』 - HONZ
    benzina
    benzina 2016/03/31
  • ウブな日本人必読!『国が崩壊しても平気な中国人 会社がヤバいだけで真っ青な日本人』 - HONZ

    書のタイトルをみて「えー、何でこんなをHONZで紹介するの?」と思った方、ちょっと待った。書は凡百の嫌中書とはわけが違う。なにしろ書いたのが、あの谷崎光である。ここに注目してほしい。 彼女は小林聡美の主演で映画にもなった『中国てなもんや商社』という傑作ノンフィクションの著者である。(残念ながらDVD化されていない) 新卒でダイエーと中国の合弁商社に入社し、中国人の狡さ、強かさに驚いたあまり、会社を辞めて北京大学に入学、北京在住15年目になる作家だ。中国人の思考と行動を分析し、日人へのアドバイスをし続けている。 そこに中国人に対する悪意はまったくない。むしろ呆れつつ尊敬していると言っていいだろう。このにも書かれているが、長く住んでいるといつの間にか感覚が中国人ぽくなってしまい、あまりにも素直な日人に対して怒りさえ感じることもあるようだ。書のタイトルはその怒りが滲んでいるような気

    ウブな日本人必読!『国が崩壊しても平気な中国人 会社がヤバいだけで真っ青な日本人』 - HONZ
    benzina
    benzina 2016/03/16
  • わたしも、ひとりではない。『死者が立ち止まる場所 日本人の死生観』時計が再び動き出すとき - HONZ

    ある朝、著者は携帯メールの着信音に起こされる。 2011年3月11日――。 彼女はアメリカ人だが母親は日人、子どもの頃からしばしば母に連れられて日を旅してまわった。福島県いわき市で禅寺を営む親族もいる。 メールはアメリカにいる著者に、日での地震を伝える友人からのものだった。幸運にも、いわき市の親族は無事だった。だがそれがわかるまでの間、不安にかられてインターネットに接続してはすぐに出る、ということを繰り返していた。 知りたくてたまらず、それでいて知りたくなかった。(中略)そこに映る海岸一帯は、私が子供のころから見知っている、私の愛する日ではなかったからだ。 じつは当時、著者は3年前に最愛の父を亡くしたショックから、心の病を患っていた。 何カ月もの間、私は自分の人生を父と祖父母が死ぬ以前の状態に戻そうと試みていた。そして、それができないとわかると――彼らをあの世から連れ戻せないとわか

    わたしも、ひとりではない。『死者が立ち止まる場所 日本人の死生観』時計が再び動き出すとき - HONZ
    benzina
    benzina 2016/03/11
  • 『中国第二の大陸 アフリカ 100万の移民が築く新たな帝国』 - HONZ

    書は Howard W. French, China’s Second Continent: How a Million Migrants Are Building a New Empire in Africa(Alfred A. Knopf, 2014)の全訳である。 わたしがいまアフリカで目にしているのは、中国が猛烈な勢いでつくってきたつぎはぎだらけの新たな利権領域である。この地では今、新しい帝国が出現しつつある。おそらくは周到に計画された帝国ではないかもしれない。それでもなお、帝国であることは事実だーー中国アフリカの関係をテーマに取材活動を続ける著者ハワード・W・フレンチ氏は書でこう指摘する。 著者は20年以上にわたり『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者、支局長として世界各地を駆け巡り、その間に中国の驚異的な発展とアフリカの目覚ましい進化を目の

    『中国第二の大陸 アフリカ 100万の移民が築く新たな帝国』 - HONZ
    benzina
    benzina 2016/03/05
  • 長崎から世界を侵略『Moving Plants』 - HONZ

    書は、シーボルトが長崎滞在の土産として持ち帰り、今やヨーロッパなどで侵略植物の代名詞となっている「イタドリ」という日の在来植物の数奇で皮肉な運命を、10年の歳月をかけてまとめた異色の写真集である。このを手にとるまで私は、この植物の存在も、それが世界に広がった経緯も、その忌まわしい現状も知らなかった。イタドリ。どこにでもある雑草である。表紙のハート型の葉に見覚えはないだろうか。プロローグには、この植物に秘められた壮大な物語に気づき、著者が取材の旅に出たときの思いが綴られている。 イタドリは日ではごく普通に見られる雑草だが、19世紀に欧米諸国に渡り、その地で大繁殖しているという。春先3メートルの高さに成長して日光を遮ってしまうため、在来種の生育を阻害し、生態系を破壊する厄介ものであるらしい。この話を聞いて以来、私はいくつもの疑問に取り憑かれている。イタドリは異国の風景の中でどんな表情を

    長崎から世界を侵略『Moving Plants』 - HONZ
  • 『1493 世界を変えた大陸間の「交換」』 こうして世界は再び一つになった - HONZ

    作者:チャールズ・C. マン 翻訳:布施 由紀子 出版社:紀伊國屋書店 発売日:2016-02-25 タイトルの『1493』とは、コロンブスが新大陸から黄金の装身具やカラフルな鳥、先住民捕虜を携えてスペインへ帰国した年である。この年を境に、超大陸パンゲアが分裂してから2億年以上もの長きにわたって独自の生態系を育んだきた各大陸が、人類の手を介して再び出会うことになったのだ。コロンブス以前には、どのような生物にも大陸間を結びつけることは不可能であり、それぞれの大陸は規模の大きなガラパゴスのような状態だったともいえる。 コロンブスの大陸到達を契機として何十億年も隔てられていた生態系が急激に混ざり合う過程は「コロンブス交換」といわれる。コロンブス交換の影響の大きさは、卓にあがる料理にもあらわれている。この交換がなければ、トマトもトウモロコシもジャガイモも、アメリカ大陸を飛び出してあなたの口に入る

    『1493 世界を変えた大陸間の「交換」』 こうして世界は再び一つになった - HONZ
    benzina
    benzina 2016/03/03
  • 『中谷宇吉郎 雪を作る話』新刊超速レビュー - HONZ

    世界初の人工雪の製作に成功し、低温科学の分野で大きな業績を残した中谷宇吉郎は、物理学者寺田寅彦の弟子であり、研究でも随筆においても強く影響を受けた。書は著者の科学エッセイ14篇を収録しており、どの文章にも詩的な表現とユーモアがふんだんに散りばめられ、純粋な科学のおもしろさがじわじわと伝わってくる。 冷えきったガラス板を天にかざし、降り落ちる雪を受け取っては顕微鏡で結晶を観察し、全く同じ形のない雪に感嘆し、生涯に渡り研究を続けた。なかでも多くの人に知られているのは、「雪は天から送られた手紙である」という名言である。しかし、雪や研究に関するものばかりではない。 明日の新聞紙面に掲載されたとしても、大きな反響を呼ぶに違いない政治家や政府の方針を暗に批判するようなエッセイもある。その一つ「琵琶湖の水」は、琵琶湖に小便をしたら、どれだけ水かさが増えるのかを簡単に計算するところからはじまるのだが、そ

    『中谷宇吉郎 雪を作る話』新刊超速レビュー - HONZ
    benzina
    benzina 2016/02/27
  • 『サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠』Why? Japanese People! - HONZ

    ビジネスのことであれ、社会全体のことであれ、誰だって正しい方向へ努力したいと思っているはずだ。だがその努力は果たして全体最適へと向かっているのか、それとも部分最適に過ぎないのか。分からぬところに問題がある。 判別を難しくさせているのは、多くの人がいとも簡単に専門領域にとらわれ、視野の狭い状態へ陥ってしまうためだ。先の金融危機など、その顕著な例と言えるだろう。誰もが知らぬ間のうちに、ちっぽけな専門家集団、社会集団、チームやグループの中へ閉じ込められてしまう状態ーー著者はそれを「サイロ」と呼ぶ。 大企業病、組織の硬直化、派閥争い、セクショナリズム、官僚主義…。いわば企業における失敗の要因として語り尽くされたかのように思えるテーマに新たな風を吹き込んでいるのは、文化人類学の視点である。著者は、かつてタジク人の風習をフィールドワークした時の経験に基づき、その対象を特定の企業や金融機関、そして学問

    『サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠』Why? Japanese People! - HONZ
  • 5000年の歴史を走破せよ!『「全世界史」講義』 - HONZ

    人間と他の動物とを分けるものとは何か?この問いに対する最大の答えは「文字」ではないだろうか。文字を生み出したことにより、人は人という種がどの様な過去を築いて現代にいたっているかを知ることができる。書は文字が発明された5000年前から現代までに焦点を絞り、その歴史を「人類5000年史」と定義して一気に読み進めようという冒険的な作品である。 なんといっても5000年にも及ぶ、世界の歴史をわずかニ巻で読み進めようというのだ。その疾走感は半端ではない。例えて言うならば、ドイツにあるような速度無制限のアウトバーンをアクセル全開で走り抜けているような感じだろうか。しかもこの道ときたら、時に東に西にと大きくカーブし、上り坂に下り坂まで存在する。そうかと思えばひたすらアクセル全開で走れる直線が現れる。読者はステアリングがクイックな高性能スポーツカーでこの歴史街道を疾走するのである。 書に素晴らしい疾走

    5000年の歴史を走破せよ!『「全世界史」講義』 - HONZ
  • 失敗の本質ーエネルギー版『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 - HONZ

    国際政治経済のゲームのルールが変わりつつある。シェール革命により自国でエネルギーをまかなえるようになったアメリカは、中東の石油に依存する必要がなくなり、不安定化する中東情勢に介入しなくなった。 かつての世界の警察官が興味を失い、ますます混迷を極める現在の中東。一方で、資源の乏しい日はそんな不安定な地域にエネルギーの大部分を依存しつづけている。アメリカによる中東地域の安定が保障されない今、日は国家として戦略的にこのエネルギー問題に対処すべきである。 この絶妙なタイミングで、過去の日のエネルギー問題を振り返る書が発刊された。今や「エネルギー界の池上彰」と称されるエネルギー専門家によるエネルギー版 失敗の質論である。太平洋戦争時、なぜ日は石油を求めて戦争へと突入したのか。過去の失敗から学ぶべきことは多い。 太平洋戦争前後のエネルギー関連資料を読み漁った著者はこう語る。 太平洋戦争に突

    失敗の本質ーエネルギー版『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 - HONZ
  • 知的興奮、大爆発!『生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学』 - HONZ

    生命がどのようにして誕生し、進化してきたのか?だれもが興味をいだくテーマだ。完全にわかるということはありえない。しかし、あたらしい技術が開発され、あらたな発見がなされ、次第に議論が収斂してきている。全地球凍結=スノーボールアース仮説の提唱者である地質生物学者著者ジョセフ・カーシュヴィンクと古生物学者ピーター・ウォードによるこのは、最新データを網羅してまとめあげられた最高の一冊だ。 原題は A New History of Life。生命の “新しい” 歴史として、三つの視点から生命の誕生と進化が描かれていく。その三つとは『環境の激変』、『単純な三種類の気体分子(酸素、二酸化炭素、硫化水素)』、『生物自体ではなく生態系の進化』。生物そのものよりも、その環境から生命の歴史が読み解かれていく。 我々の考え方というのは基的に保守的だ。だから、現在認められるプロセスが過去にもあてはまる、とする「

    知的興奮、大爆発!『生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学』 - HONZ
  • 『「全世界史」講義 教養に効く! 人類5000年史』 学びを超えた知的エンターテインメント - HONZ

    のっけから著者に反論申し上げたいことがある。出口さんは「まえがき」で、「積み重ねられた歴史を学んで初めて、僕たちは立派な時代をつくれるのではないか」という。つまり書は良き未来を創りあげるという目的のために、テキストとして読むことができると言っているように聞こえるのだ。 たしかに歴史から学ぶべきこと、いや書から学べることはあまりにも多い。それは歴史だけでなく、生き様や人間関係、組織経営に至るまで、読んでいて気付かされることが多いのに驚くばかりだ。 しかし、書は時代をつくるという崇高な目的のためだけのものではないように思われるのだ。いやそれ以上に、純粋に読む愉悦に浸ることができるだと断言できる。これからの時代を考えることはひとまず脇に置いて、早く次のページを開きたいと思わせる書は高度に知的なエンターテインメントでもあるのだ。 書を読むときのイメージは「人類5000年史」という名

    『「全世界史」講義 教養に効く! 人類5000年史』 学びを超えた知的エンターテインメント - HONZ
  • 『GDP』20世紀でもっとも偉大な発明の歴史 - HONZ

    「GDPは20世紀でもっとも偉大な発明のひとつ」 アメリカ商務省がここまで賛辞を贈るのは異例だ。しかしそれもその筈、GDP(国内総生産)以上に国の経済規模を測れる指標は存在せず、マクロ経済政策はGDPに依拠しながら策定せざるをえない。GDPは、アメリカ商務省だけでなく各国政府にとって経済政策を考える上で必要不可欠な経済指標である。一方で、これほど各国経済に多大な影響を与える指標にも関わらず、その真の姿はあまり認知されていない。GDP全史といえるような書籍は少ない。 書は、この「20世紀でもっとも偉大な発明のひとつ」に焦点をあて、GDPの誕生とその後の発展の歴史を紐解いている。たった150ページ弱の分量に、GDPとは何なのか、どのように発展してきたのか、GDPに換わる新たな経済指標とは何かがコンパクトに詰め込まれており、GDP入門書としては最適の一冊だ。Wall Street Journa

    『GDP』20世紀でもっとも偉大な発明の歴史 - HONZ
  • アルツハイマー病のすべてがわかる!『記憶が消えるとき-老いとアルツハイマー病の過去、現在、未来』 - HONZ

    いまや、アルツハイマー病という疾患名はあまねく知られている。しかし、何がアルツハイマー病の原因なのか、どんな人がなりやすいのか、そして治療は可能なのか、となると、ほとんどの人は知らないだろう。恥ずかしながら、医学部で病理学を教えている私もよく知らなかった。研究が日進月歩であり、その原因や治療法についてはまだ確定的なことがわかっていないからだ、と、とりあえずの言い訳から始めたい。 アルツハイマー病は、いうまでもなく、認知機能の低下と人格の変化を伴う認知症の一種である。認知症の6割をも占めるとされる疾患であるが、ドイツ人医師アロイス・アルツハイマーがチュービンゲンで1906年に、最初の症例アウグステ・Dを報告してから何十年もの間、全く興味をひかなかった。それには二つの理由がある。一つは、アウグステ・Dが46歳での発症、初診時51歳であったことから、若年性の特殊なタイプの認知症であり、よくある老

    アルツハイマー病のすべてがわかる!『記憶が消えるとき-老いとアルツハイマー病の過去、現在、未来』 - HONZ
  • 軍靴よりブランド靴 『WHAT IS SAPEUR ? 貧しくも世界一エレガントなコンゴの男たち』 - HONZ

    初詣くらいはスーツでビシッと決めようかと思ったものの、仕事で着るものしか持っていない。若い頃は、小遣いの何倍もするブランドもののシャツを買うためにバーゲンに並んだものだが、いつしか私は、高い服を買うのに罪悪感を抱くようになってしまっていた。 ところが、書で紹介されている男たちときたら、50歳を過ぎても、月収の何倍もするスーツを着て良い気になっている。日では浪費家というレッテルを貼られてしまいそうな彼らこそ、サプールという生き方を選んだ、誇り高きコンゴの英雄たちなのである。 「世界は“違う”からこそ“面白い”──」書は、そんなテーマで番組づくりをしているNHK「地球イチバン」のディレクターである著者が、“世界でイチバン”服にお金をかける男たち「サプール」を対象に選んだ経緯とその取材過程をまとめたルポである。サプールのルールの紹介や彼らへのインタビューなどで構成されている。 文章ももちろ

    軍靴よりブランド靴 『WHAT IS SAPEUR ? 貧しくも世界一エレガントなコンゴの男たち』 - HONZ
  • 見えない場所で起こり続ける壮絶な攻防──『スパム[spam]:インターネットのダークサイド』 - HONZ

    LINEがあるのでキャリアメールを開くことはなくなってしまったが、たまに開くと山のようにスパムメールがたまっている。普段使いのGmailにもたまにスパムメールはきているようだが、自動判定され目に触れる前にほとんどの振り分けを行っていてくれる。 時にミスって重要なメールを迷惑メールフォルダに入れているのはご愛嬌だが、もちろん普段は助かっている。その振り分けを見ながら、「きっと、背後では何かをやっていてくれるんだろうな」というぼんやりとした想像ぐらいはするが、背景についでまで考えることはあまりない。 これは僕の話だが、そんな人がほとんどではないだろうか。 たとえば、「なぜ、スパムメールなんていうものが存在するのだろう」「スパムと非スパムの境界線はどこにあり、どのように判断しているのだろう。」「そもそも、スパムを定義することはできるのだろうか」などとは、なかなか考えないものだ。しかし、現在我々が

    見えない場所で起こり続ける壮絶な攻防──『スパム[spam]:インターネットのダークサイド』 - HONZ
    benzina
    benzina 2016/01/05
  • 2015年 HONZ 今年の1冊 - HONZ

    2015年、最高の一冊を決める! さっそく意気込んでみたものの、なかなかの難題である。何をもって最高とするのか。今年最も注目を集めた一冊なのか? それとも最も売れた一冊なのか? どちらでもないだろう。我々がに求めているのは、マスメディア的なものではない。それなら、どのようなを求めてきたのか? 情報の送り手としての立場ではなく、今一度、読書人としての基に立ち返ってみる。 多くの人に影響を与えるよりも、一人の人生に狂わせるほど大きな影響を与えられる。 たとえば自由について論じられたよりも、存在そのものが自由である。 今すぐ役立つよりも、5年後にも棚から取り出したくなるような。 時間を節約するためのよりも、時間を忘れられるような。 答えが書かれたよりも、問いを見つけられる。 つまりは、の世界をもっと広く捉えて楽しみ尽くしたい。このために必要となってくるのが、多くの人

    2015年 HONZ 今年の1冊 - HONZ
    benzina
    benzina 2015/12/30