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ブックマーク / honz.jp (167)

  • 2019年 今年の一冊 - HONZ

    HONZメンバーが選ぶ今年最高の一冊。令和元年となった2019年もこのコーナーがやってまいりました。 今年はHONZが始まって以来一番の、ノンフィクションの当たり年であったと言えるのではないでしょうか。こんなにも次から次へと面白そうなが出ては読みきれません。そしてどこまでも自由なHONZメンバーたち。今年は初の試みとして、原稿の催促を一切しないでみましたが、やはりただ待っていても、原稿は届かないものです。 そんなワケで、今年は原稿の到着が遅かった順に掲載してみます。早く送ってくれた方々、どうもすみません! 麻木 久仁子 今年最も「元号を感じた」一冊 半藤一利さんといえば「歴史探偵」の異名を持つ昭和史の水先案内人のようなお方、多くの人々に昭和史探検の楽しさを教えてくれた方である。かくいう私も半藤さんの『日のいちばん長い日』や『昭和史1926~1845』『昭和史 戦後編1045~1989』

    2019年 今年の一冊 - HONZ
    benzina
    benzina 2020/01/12
  • 生物から生まれるイノベーション『生物模倣』 - HONZ

    冬木 糸一とのクロスレビュー 人が入れない環境下の作業にはロボットが使用されつつあるが、そこで注目されているのがヘビ型ロボットだ。東電福島第一原発の原子炉格納容器内部を検査するにあたってもヘビ型ロボットが活用された。瓦礫が散乱する原発事故の現場では、わずか十数センチのすき間に入り込み、内部の様子を偵察できるロボットが必要とされ、細長くしなやかな動きをするヘビに着想を得たロボットが脚光を浴びたのである。 このように、近年、生物に着想を得たテクノロジーが増えてきている。「生物模倣」(ビオミミクリーやバイオロジカリー・インスパイアード)と呼ばれる、現在注目集める新たな分野だ。 イカの皮膚機能に似た軍事迷彩服の開発、ナマコの硬軟接続を真似したインプラント開発、トカゲ型ロボットなど、奇抜なテクノロジー書では数多く紹介されている。私たち人類は自分たちがついつい動物界のピラミッドの頂点にいると思いが

    生物から生まれるイノベーション『生物模倣』 - HONZ
  • 九歳でロケット、十四歳で核融合炉を作った「天才」──『太陽を創った少年』 - HONZ

    この世には「ギフテッド」と呼ばれる神から与えられたとしか思えない才能を持つ凄い人間たちがいる。そのうちの一人がアメリカ、アーカンソー州のテイラー・ウィルソン少年だ。彼は9歳で高度なロケットを”理解した上で“作り上げ、14歳にして5億度のプラズマコア中で原子をたがいに衝突させる反応炉をつくって、当時の史上最年少で核融合の達成を成し遂げてみせた。 彼は核融合炉を作り上げるだけで止まらずに、そこで得た知見と技術を元に兵器を探知するための中性子を利用した(兵器用核分裂物資がコンテナなどの中に入っていると、中性子がその物質の核分裂反応を誘発しガンマ線が出るので、検出できる)、兵器探知装置をつくるなど、その技術を次々と世の中にために活かし始めている。書は、そんな少年のこれまでの歩みについて書かれた一冊であり、同時にそうした「少年の両親が、いかにしてのびのびと成長し、核融合炉をつくれる環境を構築してき

    九歳でロケット、十四歳で核融合炉を作った「天才」──『太陽を創った少年』 - HONZ
  • 『合成生物学の衝撃』生物学、その先の未来 - HONZ

    人類は誕生以来宇宙とは何か、物質とは何かを考え続けてきた。その理解が一気に進んだのは、20世紀になってからだった。 1916年 、アインシュタインが相対論を完成することで、宇宙を現代的に理解する基礎が出来上がった。27 年までに、ハイゼンベルグの行列力学とシュレディンガーの波動力学が発表され、 物質を理解するための量子力学の構築が始まった。現代物理学の基礎は、大正時代に形成されたのだ。 当時は一般人のみならず、技術者たちも、この難解な基礎科学が何の役に立つのかさっぱり分からなかった。しかし、21世紀に暮らす我々は、その恩恵がなければ生きていけない。 量子力学の応用である半導体がなければ、コンピューターも通信も存在し得ない。相対論がなければGPS(全地球測位システム)は動かない。人類は100年間という瞬く間に、基礎科学の恩恵を受けたのだ。20世紀が物理学の世紀といわれるゆえんである。 一方で

    『合成生物学の衝撃』生物学、その先の未来 - HONZ
  • 『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』変わろう、動こう。 - HONZ

    昨年末にアップされた、サイボウズの青野慶久社長のこのツイートを読んで衝撃を受けた若者も多いのではないだろうか。 最近、日の大企業でくすぶっている若者たちを見て思うことがある。君たちはね、就活に失敗したんだわ。時代についていけないサラリーマン社長が経営しているイケてない会社を選んじゃったんだわ。そして、くすぶり続けてるってことは、君たちも変化できない奴だってことになる。変わろう、動こう。 — 青野慶久 (@aono) 2017年12月19日 書はこの文章から始まる、これからのあるべき働き方の指針となる啓蒙書である。ここに書いてあることはほぼ正しい。そして、それは心ある人なら誰でも薄々分かっていることである。我々は皆、もう旧来の日型会社システムがワークしなくなっていることに気づいている。 しかしながら、世の中全体がおかしい時には、常識的な大人は、若しかしたら自分が間違っているのではないか

    『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』変わろう、動こう。 - HONZ
  • 『反共感論──社会はいかに判断を誤るか』 スポットライトに照らされる人たちとそうでない人たち - HONZ

    1987年、アメリカのテキサス州でわずか1歳半の女の子が井戸に落ちてしまった。女の子の名前はジェシカ・マクローア。ジェシカの体は井戸の枠に引っかかってしまい、大規模な救出活動が繰り広げられるものの、なかなか抜けない。ああ、可哀想なジェシカ。救出活動はテレビなどでも盛んに報道され、アメリカの多くの人たちがその動向に釘付けとなった。そして58時間後、ようやくジェシカは救出される。よかった、よかった。 ところで、ジェシカはなぜそれほど注目を集めたのだろうか。それはおそらく、窮地にあるジェシカに多くの人が同情し、共感を覚えたからだろう。「もし自分が(あるいは自分の子どもが)ジェシカのようであったら」と考えて、恐怖や辛さを自ら感じた人も少なくなかったはずだ。当時の米大統領ロナルド・レーガンもこう語っている。「このできごとのあいだ、全米の誰もが、ジェシカの代母や代父になった」。 そのように「共感(em

    『反共感論──社会はいかに判断を誤るか』 スポットライトに照らされる人たちとそうでない人たち - HONZ
  • 『物流は世界史をどう変えたのか』物流が国家や歴史を変えた? - HONZ

    2017年3月、英エコノミスト誌は「脅威のアマゾン帝国」という特集を組んだ。その冒頭で、今後10年以内に売上高は50兆円に達するだろうと予測している。事実、17年の売上高は19兆円を超え、米国のEコマース市場の50%に迫る勢いだ。 アマゾンはこの巨大な売り上げを支えるための物流システム構築に余念がない。16年、海運ではNVOCC(船舶を持たない貨物運送事業者)の事業を開始。空運では40機の専用貨物機を順次離陸させると発表している。 日の小売業の平均物流コストは売上高の5%弱だが、16年度だけでもアマゾンは売上高の13%もの資金を物流につぎ込む。アマゾンは物流で世界を支配しようとしているように見える。 『物流は世界史をどう変えたのか』は紀元前12世紀に地中海で活躍したフェニキア人、17世紀に世界初のヘゲモニー国家になったオランダ、19世紀の大英帝国誕生、20世紀に衰退したソ連などの国家の盛

    『物流は世界史をどう変えたのか』物流が国家や歴史を変えた? - HONZ
  • 『「日本の伝統」の正体』著者インタビュー - HONZ

    去る1月中旬、こんなメールが筆者のもとに届いた。「追加取材をしませんか」 柏書房の編集部からのものだった。文面によれば、筆者が年初にHONZで書いた『「日の伝統」の正体』(藤井青銅/柏書房)のレビューを皮切りに、正月中にAmazonは在庫切れ、紀伊国屋新宿店では完売、記事を見た他書店からも追加注文がぞくぞくと入ってきている……という状態だったそうだ。SNSを中心にびっくりするくらい拡散されていたのは気づいていたが、こうして実際に売れ行きが好調だと聞くと、レビュアーとしては嬉しいばかりだ。 それはともかく、初詣や恵方巻き、平安神宮の歴史が実は長くないという事実を含め、「日の伝統」と聞いて、なんとなくモヤモヤした思いや感情を持っている人がそれなりにいることも反響を見ながら感じていた。そんなわけで、柏書房に赴き、著者の藤井青銅さんにインタビューを行った。作家・脚家・放送作家とマルチに活躍

    『「日本の伝統」の正体』著者インタビュー - HONZ
  • 『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』男女の悩みは世界共通! - HONZ

    著者のジャンシー・ダンと夫のトムは10年一緒に暮らした後に娘を授かった。仕事は二人ともライターで大人しいタイプ。だから上手くやっていけるに決まっている。だがその思いは赤ちゃんが生まれた直後に裏切られた。ゴミ箱の中の使用済みオムツを片付けない夫にキレたのだ。 クソ野郎。この野郎。死んじまえ。 それから6年が経ち、家事をほぼ一人で担当するジャンシーは、夫に怒りを爆発させ続けている。なぜ女性だけが育児をさせられ夫は協力しないのか。 ここで一つの疑問が生まれた。愛する娘の誕生がなぜ夫婦関係を壊してしまうことになったのだろう。その謎を探り、結婚生活を元に戻すため、仕事で知りあった様々な専門家を訪ね、夫婦のカウンセリングをしてもらうことにした。 ハーバード大学進化生物学教授には、男性が家庭から逃避する適応的理由があるかと問い、事あるごとに家から脱出したがる男の心理を理解しようとする。離婚寸前カップルの

    『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』男女の悩みは世界共通! - HONZ
  • 2017年 今年の一冊 HONZメンバーが、今年最高の一冊を決める! - HONZ

    平成という一つの時代が終焉を迎えつつある今、改めて思うのは、この元号がいかに言い得て妙であったかということである。 「国の内外、天地とも平和が達成される」という来の意味には程遠かったが、たしかに世の中は、平ら(フラット)に成ってきた。売り手と買い手、情報の発信者と受信者、大企業とスタートアップ、中心と周縁、あるいはメインストリームとカウンターカルチャー。 だから、けもの道のような場所でもひたすら歩き続けていれば、突然スポットライトを浴び、メインストリームに躍り出る瞬間がある。しかしそれも長くは続かず、また別のけもの道を探しにいく。HONZの活動など、基的にこの無限ループなのだが、これがやっていて案外楽しい。 HONZメンバーが、2017年最高の一冊を紹介するこのコーナー。まずは、けもの道を歩きつづけるメンバー達の珠玉の一冊から紹介していきたい。 冬木 糸一 今年最も「人類の可能性に驚か

    2017年 今年の一冊 HONZメンバーが、今年最高の一冊を決める! - HONZ
  • 『悲劇的なデザイン』そのデザインが、命運を分けた - HONZ

    デザインのやり方一つで、人が死ぬこともある。まさかと思うかもしれないが、世の中を見渡せばそのような事実は多々見つかる。そして何より問題なのは近年「デザイン」というものの意味が拡張しており、もはや「世界はデザインで出来ている」といっても過言ではない状況にあるということだ。 書『悲劇的なデザイン』は、このようなデザインにまつわる悲惨な出来事を事例としてまとめ、悲劇の種類を体系化し、どうすればその惨事を防ぐことが出来るのかまでを言及した一冊になっている。まさに、デザイン版の『失敗の質』といったところだろうか。 そもそもデザインとは何か? ある者は「デザインとは意図の描写だ」と述べ、またある者はデザインを「プロダクトと人とのインタラクションを設計すること」だと考える。デザインは世界を前向きで楽しいものに変えられる一方で、人を「殺し」「怒らせ」「悲しませ」「疎外感を与える」力もある。ところがデザ

    『悲劇的なデザイン』そのデザインが、命運を分けた - HONZ
  • お猫様にもっと奉仕するために、その歴史と生態を知る一冊──『猫はこうして地球を征服した 人の脳からインターネット、生態系まで』 - HONZ

    様にもっと奉仕するために、その歴史と生態を知る一冊──『はこうして地球を征服した 人の脳からインターネット、生態系まで』 先日のペットフード協会の発表によると、全国犬飼育実態調査で、調査開始以来、はじめてネコの推定飼育数が犬の数を上回ったという。人類の相棒は犬じゃなくてネコだった──というわけではないけれども、少なくともペットの王は今やネコに移り変わりつつあるといえるのではないだろうか。飼いやすいというのもあるが、ネットをみればネコの画像や動画はいつだって大流行で、あっという間に万を超える閲覧、再生数を叩き出し人間の心を鷲掴みにする。 いったいネコの何が人間をそこまで惹きつけるのだろうか。犬は狩りもすれば防犯にも役にたち、飼い主が苦しんでいれば寄り添って慰めてくれる。お座りだろうがお手だろうがちょちょいのちょい。一方、ネコはどうだ。お手ができるネコが現れれば奇跡のような扱いを受け、

    お猫様にもっと奉仕するために、その歴史と生態を知る一冊──『猫はこうして地球を征服した 人の脳からインターネット、生態系まで』 - HONZ
  • 『最初に父が殺された』南アジアの楽園で起きた凄惨な歴史 - HONZ

    ときに歴史は恐ろしいほどに陰惨な物語を生み出す。民主カンプチアでおきた出来事は、ナチスのホロコーストや、毛沢東の大躍進政策、文化大革命にも匹敵する人類史上稀に見る惨禍であろう。民主カンプチアという名前でピンと来なければポル・ポト政権と呼んでもかまわない。 この政権での、極端な共産主義思想に基づいて行われた虐殺と飢餓で、全国民の四分の一にあたる二百万人以上が殺害された。書では二百万人という数字が採用されているが、一説には三百万人以上ともいわれており、この数字を見るだけでも、ポル・ポト政権の恐ろしさが理解できるであろう。 書は民主カンプチア時代を生き抜いた一人の女性の回想録だ。2000年に一度翻訳され出版されている。俳優のアンジェリナ・ジョリーが初監督作品としてNetflix作を映像化したのをきっかけに、このたび復刊される事になった。 著者ルオン・ウンはカンボジアの首都プノンペンで生ま

    『最初に父が殺された』南アジアの楽園で起きた凄惨な歴史 - HONZ
  • 言葉の解釈をめぐる、解決困難な諸問題──『自動人形の城: 人工知能の意図理解をめぐる物語』 - HONZ

    書は、同著者による数学的原理に裏打ちされた傑作ファンタジィ『白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険』、その続篇『精霊の箱: チューリングマシンをめぐる冒険』とはまた違った物語──副題にもある通り、命令を何でもこなしてくれるスゴイ人工知能をつくる上で避けては通れない、コミュニケーションにおける人工知能の意図理解についての一冊である。 図や数式は一切なく、ワガママで勉強嫌いな王子と、彼の住まうクリオ城へと危機が迫り、「人間の命令を忠実に実行する」自動人形に囲まれた、王子の孤独な戦いがはじまる──。といったファンタジィとも童話ともいえる物語を純粋に楽しみながら読み進めるうちに、人と機械のコミュニケーション時に不可避的に発生する、「意図の理解」をめぐる難しさ、自然言語で機械に対して命令する際、原理的に出現する諸問題が把握できてしまうという優れものだ。 作の「人形」は、現実世界では

    言葉の解釈をめぐる、解決困難な諸問題──『自動人形の城: 人工知能の意図理解をめぐる物語』 - HONZ
  • 2017年のベストビジネス書はこの本に決まり!『SHOE DOG』 - HONZ

    ひさしぶりに読んでいてワクワクするビジネス書に出会った。そのの名は『SHOE DOG(シュー・ドッグ)』という。2017年のベストビジネス書はこので決まりだ!発売する前からこのには注目していた。読んでみたら、これが期待のさらに斜め上をいくおもしろさだった。550ページ近くもあり、ボリュームのあるだが、まったく飽きさせることなく、一気に読めてしまい、後半にいくにつれて読み終わってしまうのが寂しい。そんな思いを抱かせる1冊だった。 昨年、このの原著をみかけたときから、日ではいったいどこが翻訳書を出すのだろうか?とずっと注目をしていた。直感的にこのは売れる!と思ったからだ。翻訳書の中には発売前から売れるのがわかっているというものが存在する。このもそういっただと思ったのだ。洋書の表紙に書かれていたSHOE DOGという言葉は見慣れないもので、著者のフィル・ナイトという人のことも

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  • 社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ

    『チャヴ』、聞き慣れない言葉である。もとはロマ族の「子供」を指す言葉「チャヴィ」から来た、英国において用いられる「粗野な下流階級」を指す蔑称である。いくつかの英語辞典を調べてみると、「生意気で粗野な態度によって類型化される若年下流階級(オクスフォード英語辞典)」、「教養の欠如や下流階級であることを、その衣服や話し方、行動があらわすような人を示す蔑称。通常は若者を指す。(ケンブリッジ英語辞典)」、「たとえ高価であっても、その趣味が低俗であるとされる若い労働者階級(コービルド英語辞典)」などとある。 さんざんな物言いである。しかし、これらの定義を全部あわせても、チャヴという言葉を正しく理解するには足りないようだ。そこには「公営住宅に住んで暴力的」、「中流階級の謙虚さや上品さがなく、悪趣味で品のないことにばかり金を使う浪費家」、さらには、「暴力、怠惰、十代での妊娠、人種差別、アルコール依存」とい

    社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ
  • 『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方 - HONZ

    『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方文庫解説 by 橘 玲 『子育ての大誤解』は掛け値なしに、これまででわたしがもっとも大きな影響を受けたのひとつだ。なぜなら長年の疑問を、快刀乱麻を断つように解き明かしてくれたのだから。 いまでいう「デキ婚」で24歳のときに長男が生まれたのだが、その子が中学に入るくらいからずっと不思議に思っていたことがあった。親のいうことをきかないのだ、ぜんぜん。13、4歳のガキと30代後半の大人では、経験も知識の量も圧倒的にちがう。どちらが正しいかは一目瞭然なのに、それを理解できないなんてバカなんじゃないのか、と思った。 しかしよく考えてみると、自分も親のいうことをまったくきかなかった。だとすればこれは因果応報なのだとあきらめたのだが、それでも謎

    『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方 - HONZ
  • 『生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方』そこには、最低限の秩序だけがあった - HONZ

    「出勤日も、出勤・退勤時間も自由」 「欠勤の連絡をしなくてよい」 「嫌いな作業はやらなくてよい。好きな作業だけやればよい」 著者の武藤北斗さんが経営している水産加工会社のルールである。こんな職場、当にあるの? のっけから驚かされる。理想主義も行き過ぎて、意識高い系の実験的な試みはいいけれども「生き生き働く笑顔」のうらになにか無理が潜んでいるんじゃ…。などと恐る恐る読み始めたのだが。 とにかく徹底している。その日出勤するかしないかは各人の自由なのだが、行くか行かないかを連絡する必要すらないのだという。というか連絡は「禁止」なのだ。なぜなら「好きな日に休んでいいよ」といいながら「だけど連絡はしてください」だの「事前に報告してください」だのと言えばやはり管理されているように感じるだろうし、無言のプレッシャーをかけることもできることになってしまって、ルールが形骸化するからだ。たしかに「うちは福利

    『生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方』そこには、最低限の秩序だけがあった - HONZ
  • 『復讐者マレルバ 巨大マフィアに挑んだ男』獄中で本を読み漁るうちに… - HONZ

    フランク・シナトラがシチリアのパレルモに到着したのは、1963年10月のことだった。マフィアの新しいドンであるジェンコ・ルッソを表敬訪問するため、アメリカのマフィアから親善大使として送り込まれたのだ。 ところが世界的大スターであるにもかかわらず延々と待ちぼうけをわされ、ドン・ジェンコの自宅での昼会に招かれたのは2日後のことだった。大広間に案内されると、そこには12人の男たちが待っていて、主賓席には当たり前のようにドン・ジェンコが座り、シナトラはもっとも遠い末席に座らされた。 ボスが一口目を口に運んだのを合図に会がスタートする。全員が一斉にボスを真似する様は、まるでクローンのようだったという。ところが事の途中で困ったことが起きた。ボスがパンを手に取り、ポケットからジャック・ナイフを取り出し一切れ切り分け次の者にまわす。すると次の者も同じようにする。最後にシナトラの番になったが、どうす

    『復讐者マレルバ 巨大マフィアに挑んだ男』獄中で本を読み漁るうちに… - HONZ
  • 二次元世界の住人から、三次元はどう見える?──『フラットランド たくさんの次元のものがたり』 - HONZ

    作者:エドウィン.アボット・アボット 翻訳:竹内 薫 出版社:講談社 発売日:2017-05-12 フラットランド。そこは二次元の世界。立体が存在しない、いわば紙の上の世界だ。 そんな世界にも住人は存在する。まず女性は直線で、兵士や下層階級の労働者は二辺の長さが等しい三角形。中産階級は正三角形と、それぞれ形で身分が決定されている──そんな特殊な世界を描きながら、自身の今いる次元の世界から、一つ上、あるいは下の世界がどのように見えるのかを物語として描き出したのが、書『フラットランド たくさんの次元のものがたり』だ。 原書が出版されたのは1884年のイギリスである。当時は評価されなかったというが、「二次元世界の住人」という架空の視点を導入することで次元の質をついた内容が、アインシュタインの相対性理論発表以後、再評価された。書はその日語新訳版である。百年以上前のじゃん! と思うかもしれ

    二次元世界の住人から、三次元はどう見える?──『フラットランド たくさんの次元のものがたり』 - HONZ