定年後、家庭菜園の野菜作りではなく、仕事として農業を始める人はあまりいない。半自給的な農業とやりたい仕事を両立させる「半農半X」という生き方が注目されているが、元都庁職員の佐藤博さん(65)は、専業農家として無農薬の米作りに取り組んでいる。 生まれも育ちも東京の五反田で、農業の経験はゼロ。周囲には「田んぼはおろか畑もなかった」。理科系の大学で化学を学び、水質検査や大気汚染防止など環境関連の仕事に36年従事。15年前、住まいのある茨城県龍ケ崎市で地域住民と一緒に米作りを始めた。 「自治会で農薬の空中散布による被害が問題になって、自分たちで無農薬の安全な米を作ろうと、『米米サークル』という活動を始めたのがきっかけですね」 60歳で都庁を退職。中心的な人が他界しサークルが解散したのを機に、前から考えていた米作りを本格的にやろうと決断。とはいえ、農家でなければ耕作放棄地を借りることもできない。1町