預言者ムハンマドは、あるとき多くの信徒の前で言った。「決して揺るがぬ信仰心を持ちなさい。それさえあれば、あの山をひざまづかせる事もたやすい。」そこで彼は、山を動かそうと一心に祈った。そうすると何と、山は… 山はびくともしなかった。 固唾をのんで見守っていた信徒たちの前で、ムハンマドは少しもあわてず言った「山がここへ来ないのなら、私が山の方へ赴こう。」 この逸話は、何を意味しているのであろうか? ムハンマドが大法螺ふきのペテン師だった事を示しているのであろうか? 決してそうではない。 信仰が動かなければ、山が動く。山が揺るがなければ、信仰が揺らぐ。この因果が中断されるのだ。はじめ人々の関心は、多少の期待を込めて、山が動くかどうかに集中している。だが、山が動かぬとわかってからは、今度は信徒たち、ひいてはムハンマド自身の信仰がこれで揺らぐかどうかに、関心の焦点は移動する。しかし、いずれも動かない