私が運転免許を取得したのは、1955年のことだった。この年、トヨタから初代クラウンが発売されている。日本の自動車史にとって、クラウンは大きな意味を持っている。 初めての純国産高級車であり、このクルマによってヨチヨチ歩きだった自動車工業がようやくしっかりとした歩みを始めたのだ。 クラウンは代を重ねて現在も造り続けられており、昨年14代目となった。初代からそろそろ60年になるが、今でもクラウンは日本を代表する高級車だ。その足跡をたどれば、日本の自動車史が俯瞰(ふかん)できると思う。日本の自動車産業は戦争で壊滅的な打撃を受けた。復興しても、欧米のクルマははるか彼方(かなた)に仰ぎ見る存在だった。 トヨタは2008年に初めて世界自動車販売台数で1位を獲得するが、当時そんなことを想像した人は誰一人としていなかった。 敗戦の年、私は国民学校1年生だった。セミ取りばかりしていた少年が、進駐軍の乗ってきた