──井出社長は2013年にシャープを辞してワコムに入社しました。ワコムの強みと弱みをどう客観的に分析していますか。 ワコムには長年、ペンの技術にフォーカスしてきた歴史があります。1983年の創業以来ペンタブレットを開発し、91年にはディズニー映画「美女と野獣」の製作に採用されました。自動車メーカーの設計者などプロのクリエーターに支持され、世界シェア9割という強みを持っています。 ただし、これは実は弱みでもあります。プロの世界で培われた匠の技と経験値はありますが、それはいわば閉ざされた世界。この数年間でペンタブレットは一般消費者へと市場が拡大し、米グーグルや米マイクロソフト、米アップルなどITの巨人も参入し始めている。彼らと対等に渡り合い、したたかな戦略を駆使しなければ生き残れない。そうした感覚はこれまで少し弱かったように思います。 ──ニッチな世界での仕事が、グローバルな戦場の真っただ中に