認知症の女性が、親族ではない京都弁護士会の柴田茲行(しげゆき)弁護士(82)に計約5億円相当の遺産を贈与するとした遺言書は無効だとして、女性のめいが京都地裁に起こした訴訟の判決があり、同地裁は遺言は無効とした。橋詰均裁判長は「女性は遺言作成時、認知症により利害得失を理解できる能力が著しく減退していた」と判断した。判決は11日付。 判決によると、女性は呉服店を経営していたが、2003年11月頃に認知症を疑わせる症状が出た。柴田弁護士と店の経営移譲や遺産相続などを相談して「私のいさんは後のことをすべておまかせしている弁ご士にいぞうします」などという遺言書を作り、09年に92歳で死亡した。その後、柴田弁護士は遺言書を基に預貯金計約3億2700万円や、呉服店の株式など約2億円相当の贈与を受けた。 判決は、めいを女性の相続人と認定。橋詰裁判長は「赤の他人の弁護士に全遺産を遺贈しようとするのは奇異だ」
理化学研究所の倫理委員会が19日開かれ、同研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の高橋政代・プロジェクトリーダーらのチームが申請していたiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた網膜再生治療の臨床研究計画について「適正と判断する」と承認した。 臨床研究では、様々な臓器の細胞に変化できるiPS細胞から網膜の細胞を作製。加齢黄斑変性で視力が低下した患者に移植し、網膜が再生できるかどうかをみる。倫理委では先月下旬から検討を開始。有効性や安全性などを評価していた。 チームは、実際に治療を行う先端医療振興財団「先端医療センター病院」(神戸市)にも同様の申請を終えている。21日に同病院の倫理委があり、問題がなければ承認される予定だ。 理研、同財団ではその後、厚生労働省に審査を申請。手続きが順調に進めば、iPS細胞を実際に使う世界初の治療が来年度中に実現する可能性が高い。
ごく微量の物質を分析できる大型放射光施設「SPring―8(スプリング8)」(兵庫県佐用町)で、犯罪捜査の科学鑑定を専門に行う組織が設立された。従来の1000倍の精度を誇る新しい分析技術に、警察OBら捜査のプロのノウハウを生かすのが狙いだ。 組織は、和歌山・毒物カレー事件で鑑定人を務めた元兵庫県警科学捜査研究所長の二宮利男さん(69)や元警察庁刑事局長、元大阪府警科捜研所長ら4人。「ナノ・フォレンシック・サイエンス(法科学)グループ」の名称で今後、増員する。 事件現場に残された微物を鑑定し、どう活用すれば容疑者特定や犯罪の立証に有効かなどをアドバイスする。合成麻薬MDMAや覚醒剤中の不純物の分析結果などもデータベース化し、他の事件解決に役立てる。 1997年に建設されたスプリング8は、電子を光速近くまで加速して発生させる放射光によって1ピコ・グラム(ピコは1兆分の1)以下の物質も分析できる
11日夜、打ち上げに成功した準天頂衛星「みちびき」。「8の字」を描きながら南北を往復する独特の軌道の衛星が実現する端緒は、12年前に打ち上げた通信衛星の失敗にあった。 準天頂衛星は、ビルや山で電波が遮られるのを避けるために、日本の真上近くを飛ぶ。衛星測位システムの構築を目指し、通信総合研究所(現情報通信研究機構)などが1970年代から構想していた。しかし、コストの問題で実現の見通しは立たなかった。 「実際に打ち上げを見られて本当にうれしい」。実現に向け、基礎データを積み上げてきた情報通信研究機構の田中正人上席研究員(52)はそう語る。 実現のきっかけになったのは、98年2月に打ち上げられた通信放送技術衛星「かけはし」。ロケットのエンジンの燃焼が不十分で、予定していた静止軌道より低い軌道へ投入されてしまったため、計画していた実験をほとんど行えないまま、99年8月に運用を終了した。 だが、田中
納豆のネバネバ成分を利用した水質浄化剤を使って、濁った池をきれいにする実証実験が3日、大阪市内で行われた。緑褐色のアオコなどに覆われていた池が、約6時間後には底まで透き通った。短時間で効果が表れ、生態系への負荷も少ない水質浄化法として注目されそうだ。 水面から15センチ下までしか見えなかった杭全(くまた)神社(平野区)の池で、浄化剤4キロを水に溶かしてホースでまくと、濁りが凝集し始め、2〜3時間後には塊が水面に浮かんだ。流出油の拡散を防ぐのに使われるフェンスを使って塊を除去すると約1メートル下の池の底が見え、小魚やエビの姿も確認できた。 浄化剤は、納豆の糸に含まれるポリグルタミン酸が主成分の粉末で、濁りの原因物質を効率よくからめ取り、魚などには害を与えない。水処理剤メーカーの日本ポリグル(大阪市)が2002年に実用化した。
全国各地で医師を志す若者にへき地での勤務をどう思うか尋ねたところ、「従事したい」と答えた医学生や研修医は約7割に上ることが、武田裕子・三重大教授(地域医療学)のグループによるアンケート調査で明らかになった。へき地では深刻な医師不足に陥っているが、武田教授は調査結果を踏まえ、「勤務を前向きに受け止めている若者は多く、どう現場に導くかが課題となる」としている。 調査は2008年から昨年にかけ、全国41大学の医学生(4、6年生)と342医療機関の初期研修医計1万1128人を対象に行い、計7199人から回答を得た。へき地での勤務について回答したのは6965人で、「積極的に」(12%)、「一定期間ですむなら」(57%)を合わせ、4810人が「従事したい」と回答。「なるべく避けたい」(20%)、「自分にはありえない」(7%)の回答を大きく上回った。 最終的に勤務地域を決める際の条件を19項目挙げ、何を
航空機の模型が宙に浮かんでいる。飛行機やロケットの飛行状態を模擬試験する、宇宙航空研究開発機構の「磁力風洞」だ。模型に仕込んだ磁石と風洞本体が発する磁力の反発力で釣り合いをとり、模型が浮かぶ仕組み。欧米の研究機関も開発に挑むが、60センチ四方という実用に耐える大きさの装置実現に、同機構が一番乗りした。 風洞試験はふつう、模型の後端から水平に伸びる棒で支え、前から風を送って行っている。ただ、棒に沿って風の流れが整い、実際の飛行で機体の後ろにできる空気の渦が観察できない。スーパーコンピューターによる模擬実験でも渦は再現できないが、宇宙機構は磁力風洞による実験で渦の様子を世界で初めて解明した。 渦が機体に与える力は無視できず、現在は空気力学の計算手法で推定値を出して設計に生かしている。風洞の開発にあたった同機構の沢田秀夫さんによると、実際の飛行に近い渦を再現できることで、航空機の設計に将来、大き
来年11月に部分稼働…安定供給へデータ検証 関西電力は20日、堺市の臨海部で建設する大規模太陽光発電所(メガソーラー)の運転開始を、当初の予定より1年程度早めて2010年11月とする方針を明らかにした。メガソーラーには技術的に未知の部分が多いため、まず全体の3分の1程度を稼働させ、収集したデータを検証しながら段階的に運転を始めることにした。 この発電所の出力は、11年10月のフル稼働時には、世界有数の約10メガ(1メガは100万)・ワットに達する。総事業費約50億円を投じ、シャープの液晶パネル工場近くで、大阪府が所有する約20ヘクタールに建設するが、当初は11年度中にフル稼働させる計画だった。 太陽光発電は二酸化炭素(CO2)を排出しない新エネルギーとして期待されているが、天候に左右されて発電量が不安定になる弱点がある。例えば、天気が悪くなれば出力が一気に低下し、原子力や火力など既存の発電
まいど1号が9月28日に撮影した地球。これが最後の画像となった(中央に見えるのは腕の部分)=東大阪宇宙開発協同組合、宇宙機構提供 町工場のおっちゃんたちの夢を乗せて今年1月に宇宙に飛び立った雷観測衛星「まいど1号」が先月10日、運用を終えた。まいど1号は、20〜30年後に大気圏で燃え尽きるまで宇宙を漂うだけとなった。打ち上げから9か月。開発した東大阪宇宙開発協同組合(大阪府東大阪市)が当初、「信頼性が高く3年は運用できる」と自負していたことを思えば唐突な引退だ。なぜこうなったのか。まいど1号が残したものとは――。 「本来3か月で終わるはずだった」「運用が長々と続いた」。先月16日に開かれた運用終了の記者会見。組合幹部の口から出た言葉は、夢を語った打ち上げ時とはまるで正反対だった。 大阪の中小企業などが「不況で苦しい時こそ夢を」と、組合を設立したのは2002年。翌年、新エネルギー・産業技術総
兵庫県明石市の市立市民病院(398床)は26日、消化器科の医師11人のうち8人が辞める事態になり、3月から同科の外来患者の新たな受け入れを中止すると発表した。同科の診療科長(59)が3月1日付で市内の民間病院長に就任するのに伴い、科長を慕う部下の医師らも次々と退職したいと申し出たのが原因。全国的な医師不足で体制を元に戻す見通しは立たず、市民病院は「一度にこんな大量に辞めるとは想定外」と当惑している。 病院によると、診療科長は消化器科で唯一、学会が認定した指導医で、1月中旬に辞表を提出した。このため20歳代の研修医3人が「指導を受けられなくなる」と退職を決め、中堅医師3人も「科長を慕っていた」などとして辞表を出した。出身大学に復帰する1人を加えると、3月末までに計8人が同科を去る。 病院側は複数の大学に支援を求めているが、医師不足のため、いずれも断られたという。3月から消化器科では救急患者の
16年間、凍結していた死体から、クローン技術でマウスを誕生させることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の若山照彦チームリーダーらが成功した。冷凍庫で凍らせた死体からクローンを作製したのは世界初。永久凍土に眠るマンモスなど絶滅動物の復活が期待でき、死者の“再生”につながる可能性もはらむ研究だ。米科学アカデミー紀要電子版に4日発表される。 クローンは、核を抜き取った卵子に、コピーしたい動物の体細胞の核を入れ、これを代理母の子宮に移して誕生させる。凍結死体の場合、薬剤で保護していないと細胞がひどく壊れるため、核を取り出すのが困難で、これまで報告されたクローン動物はすべて生きた細胞からできていた。 若山さんらは、細胞を培養液内で軽くすりつぶし、核だけを押し出すように抜き取る手法を開発。氷点下20度で16年間凍結保存されていた研究用のマウスを解凍し、脳細胞や血液細胞の核を健康な
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