濱口竜介の監督作『悪は存在しない』は、『ドライブ・マイ・カー』(2021年)で意気投合した音楽家・石橋英子とのコラボレーションによってつくられた。石橋から受けた映像制作のオファーをきっかけに、石橋のライブ用サイレント映像作品『GIFT』とともに生まれた長編映画だ。 長野の自然豊かな町に持ち上がった、グランピング場の建設計画をめぐって展開される物語は、地方と都市、自然と都会という単純な二項対立では割り切れないさまざまな問いを観る者に投げかける。「現実は、我々が思ってるほどはっきりと分かれているわけではない」と語る濱口。むしろその割り切れなさこそが本作の核にあったようだ。作家の鈴木みのりが話を聞いた。 予告編でも初めに使われている、『悪は存在しない』のファーストショットに、わたしはとても困惑した。この映画の舞台となる長野県・水挽町(架空の町)にある、山中の林を下から捉えながら進んでいくショット
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