前回、宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(JAXA/ISAS)が、その前身の文部省・宇宙科学研究所(ISAS)の時代から、通称「宇宙研方式」という独自の計画管理手法を発達させてきたことを解説した。その上で、X線天文衛星「ひとみ」分解事故の背後には、ISASの工学系が弱体化したことにより宇宙研方式がうまく機能しなくなっていたこと、本質的に宇宙研方式が、ひとみのような大きな衛星を開発するのに向いていないことを指摘した。 しかし、宇宙研方式には、単なる衛星・探査機の計画管理手法という以上の大きな意義があった。実は、宇宙研方式というプロジェクトマネジメントのやり方は、日本の技術開発と人材育成を根底から支えてきた。 このため、ひとみの事故対策として、宇宙研方式を廃し、より厳密な方式に置き換えるだけでは、「技術開発と人材育成」を今後どうするのかという、一層やっかいな問題が発生する。 ISASで泣いて