この連載では、「シングル介護」の事例を紹介していく。「シングル介護」とは、未婚者や、配偶者と離婚や死別した人、また兄弟姉妹がいても介護を1人で担っているケースを指す。その当事者をめぐる状況は過酷だ。「一線を越えそうになる」という声もたびたび耳にしてきた。なぜそんな危機的状況が生まれるのか。私の取材事例を通じて、社会に警鐘を鳴らしていきたい。 独身の中年息子がプレゼントしたマンションで母親が転倒して…… 関西地方の旅行会社に勤める狛井(こまい)正浩さん(仮名、57歳独身)は、生まれ育った家で40年以上、両親と共に暮らしてきた。昔ながらの一軒家で、段差が多く湿気がこもり、夏は暑く冬は底冷えする。狛井さんは、夜中によくトイレへ行く母親が心配だった。 そんなある日、同じ町内に新築マンションの建設が決まり、ふらっとモデルルームを見に行った狛井さんは、ひと目見て気に入ってしまう。 2009年10月、狛