■要旨 今年の通常国会に提出されていた「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(以下、全世代社会保障法)は2023年5月の参院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。 今回の法律では、出産時に支払われる「出産育児一時金」の引き上げに加えて、75歳以上の後期高齢者に課される保険料の上限引き上げ、身近な病気やケガに対応する「かかりつけ医機能」の強化、国と都道府県が6年周期で策定している「医療費適正化計画」の見直しなど数多くの内容が盛り込まれた。 そこで、本稿では2回シリーズで、医療保険制度改革や医療費適正化計画の見直しなどを中心に、制度改正の内容を概観するとともに、その目的や意味合い、今後の展望などを論じる。 このうち、今回の(上)では主に医療保険制度改革に関する部分に着目し、全体として全世代で応能負担を強化する流れが強まっている点を論じる