<円安は日本企業の輸出に有利になるとされてきたが、現在の円安で日本経済はメリットを享受できていない。その構造的な問題とは> 円安が急速に進んだことで、「悪い円安」論に注目が集まっている。円安は日本経済にとって追い風になるというのがこれまでの通説だったが、今回はそれとは真逆の反応となっている。 理由の1つとされているのが、製造業の現地生産化による相対的な輸出の減少である。現地生産化によって円安メリットが減っているのであれば、生産拠点を日本に戻せばよいという見方も出てくるかもしれないが、そう単純な話ではない。 日本の製造業は1990年代以降、コストが安い中国や東南アジアに生産拠点をシフトしてきた。2020年度における日本企業の海外生産比率は22.4%となっており、90年度(4.6%)と比較すると大幅に増えている(内閣府調べ)。海外生産比率が上昇すると、日本からの輸出が減るので、円安のメリットを