安部公房「良識派」 「見える悪」と「見えない悪」 安倍公房は「壁」、「砂の女」の著者として、日本の現代文学を代表する小説家であり、劇作家だ。私が大学院に通っていたころは、文系の学生達はみな安倍公房を読んでいるのが当たり前だった。(私は当時、読んでいなくて話についていけないことがあったのでよく覚えている笑) 「良識派」は鑑賞教材として教科書に掲載されているとても短い文章だ。授業で取り扱う義務はないが、夏休みの宿題として感想文を書かせ、二学期の初めに解説を行っている。 「良識派」の内容を簡単に紹介すると、自由であったニワトリたちが、言葉巧みな人間によって檻に入れられ、自由を失い、生殺与奪の権を握られてしまうという話だ。これは単にニワトリの話ではなく、人間社会を描いた寓話である。初読でそこまで読み取れる生徒もいれば、ただ「ニワトリがかわいそう」という感想で終わる生徒もいる。そこで終わってしまうと
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