生物の設計図ともいえる遺伝情報(ゲノム)を自在に改変する「ゲノム編集」。作物や動物の品種改良を効率化したり、新しい機能を備えた食品を開発したりするなど、従来の育種や遺伝子組換えに代わる新しい技術として、応用研究が盛んに進められている。そうした中で議論されているのが、ゲノム編集技術で作られた食品の規制の在り方だ。わたしたちはどう向き合えばよいのか。生命倫理を研究する北海道大学安全衛生本部教授・石井哲也さんに聞く。 解禁ではなく「登場」。本格的な栽培も間近 ――「ゲノム編集で作られた作物や食品が、日本でこの夏にも解禁される」という報道がありますが、どういうことなのでしょうか? 石井 一部のメディアは「解禁」という言葉を使っていますが、解禁も何も、これまで日本には、ゲノム編集に関する規制は何もありませんから。つまり「禁じられていなかった」のです。 国内では一部の研究機関で、筋肉量を抑える機能を壊