≪ゼノンのパラドクス≫ 30年間に渡って、この言葉につきまとわれてきた。いや、物ごころのつき始めたうる覚えの かすかなる漠然とした疑問の記憶の時期にまで遡れば、それ以上である。 ものは何故あるのか? そして何故なくなるのか? 思えばこんな疑問に振り回され続けてきたのである。 私はプロの学者ではないし、哲学について専門的に学問を積んだ者でもない。 これから記するものは、私の単なる随想であり、感想に過ぎない。 とても手の届かない、遥か彼方のサンクチュアリィへの羨望かも知れない。 言葉に一切の脈絡も、系統だった理論の展開も、一貫性もない。 話の前後もなく、関連性にも乏しい。すべてはただ思いつくまま、気の向くままに 書き始められ、結論めいたものもないまま書き終える予定である。 そのことのみ、どうかご承知おき下さい。 Paradox Ⅰ 俊足のアキレスが立っている。前方の彼方に亀が一匹這い進んでいる