はじめに 「機能的エリートたちの知と、政治家たちの権力との対話だって?そんな対話を求めるのは、何も知らずに今日の知の力を過小評価するものであろう。(中略)経済の分野でも情報の分野でも、政治はもう絶頂期にはない。手をつなぐ相手が欲しいのは政治であって、学問ではないのだ」[1]。 これは、フランクフルター第四世代を主導するノルベルト・ボルツの発言だが、単なる挑発ではない。その背景にあるのは、システム理論的な洞察である。それによれば、政治的コミュニケーションと学術的コミュニケーションとの間には、避けられない差異がある。それは、コミュニケーションを形式化させているメディアが異なるためだ。政治は、権力をメディアとすることで形式化している。一方で学術は、真理をメディアとすることで形式化している。厳密さを犠牲にして単純化させて言えば、政治は反証を好まないのに対して、学術は反証を好むということだ。これは、