今回は比較的肩のこらない本を紹介します。 書を学ぶための古典的な書は多く石碑に刻まれています。多くの人はその拓本を手本にして書を学んでいるはずですが、たとえば実際に西安の碑林でそうした古典的な碑と対面すると、ある意味では肉筆よりもその生々しさを感じることすらあります。西安碑林にしょっちゅう通うわけにもいきませんが、日本にも比較的近い過去の名碑をじかに感じることのできる場所があります。たとえば東京の隅田川東岸の「墨堤」と呼ばれる地域。近くには東京スカイツリーが立ち、賑わっていますが、墨堤はそう人が多くありません。ところが近辺の寺社などには江戸末期から大正時代までの石碑が多く残されており、ガラスケース越しでなく、過去の名筆にじかに触れるには最適の場所なのです。そんな理屈は抜きにしても碑を見ながら散歩するのは楽しいものです。私にとっての無類の楽しみは墨堤で碑を見た帰りに、浅草で蕎麦屋でちょっと飲