2017年2月20日 著作権改正 〘情報・メディアと知財のスローニュース〙 「ついに決着・・・・・・・か?『三代目 日本版フェアユース』の現在地点」 弁護士 福井健策 (骨董通り法律事務所 for the Arts) 朝日新聞の報道から幕は上がる。「グーグルブックスの日本版が解禁される」というのだ 。言わずと知れた、世界中の書籍をスキャンして全文検索を可能にするグーグルの「全世界電子図書館化」プロジェクトで、かつて本コラムでも大きな反響を頂いた。 相変わらずしびれる切り口の上手さだが、これは文化審議会「新たなニーズ・ワーキングチーム」の方針を取り上げたもの。筆者も加わった知財本部「次世代知財システム委員会」が、著作権への「柔軟な例外規定」の導入 を打ち出したのを受けた議論が13日、報告書にまとまったのだ 。まだまだ法制化はこれからだが、この段階でのコメントを書いておこう。感想は3つである。
映画や音楽、出版、新聞、放送など著作物に関わる7団体は2016年10月24日までに、「『柔軟な権利制限規定』についての私たちの意見」と題する声明文をとりまとめて、発表した。 イノベーションを通じた新産業の創出のため著作権法に「柔軟な権利制限規定」を設けるべきという意見があることに対して、反対を表明する内容となっている。新産業の創出は、あくまで著作権者との協力関係によって実現すべきと主張する。 声明文では、柔軟な権利制限規定を設けると、「居直り侵害者」「思い込み侵害者」が増加し、非生産的な侵害対策コストがますます増大することなどを懸念する。懲罰的賠償制度などの法制度を持つ米国などと異なり、日本は損害賠償請求などの訴訟で侵害対策コストの回収は困難であることや、米国型の紛争解決制度の導入はコンテンツ産業のみならず日本社会全体における紛争解決コストの拡大につながるとも指摘する。 声明文では、米国な
日本新聞協会や日本映画製作者連盟、日本書籍出版協会など7団体は24日、著作権法を改正して米国型の「柔軟な権利制限規定」を導入することに反対する声明文を発表した。7団体は近く、声明文を文化庁など関係省庁に提出する方針。 他の団体は日本音楽事業者協会▽日本雑誌協会▽日本民間放送連盟▽日本レコード協会。同法を巡ってはデジタルネットワークの発展に伴い、著作権処理を迅速化し国際競争に勝つため、米国の「フェアユース規定」をモデルにした法改正を求める声が起き、政府・自民党が検討している。同規定は、コンテンツの使用者が著作物の公正な利用と判断した場合は無許諾でそのコンテンツを使い、著作権者とトラブルになった場合は裁判で決着をつけるもの。 しかしコンテンツを製作販売する側の諸団体は、同規定が導入された場合、悪質な侵害行為も適法になったと誤解する「居直り侵害者」が増加するとして反対している。
MIAUは、TPP知財条項について議論される「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第6回)」に、下記の意見書を提出いたしました。また当日は下記意見書にそって事務局長の香月が意見を述べます。 内容は以下の通りです。 2015年11月4日 TPP批准にかかる著作権法改正について 一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU) TPP交渉が大筋合意と公表されてまもなく1ヶ月が経過しようとしているが、いまだ条文が公開されておらず、政府や文化庁から発表されているのはその概要にすぎない。このような情報が乏しい状況で議論をはじめることに憤りを感じる。合理的な議論を進めるためにも、TPPの条文、そしてその付随文書をすみやかに公開することを強く求める。政府は「TPPはパッケージである」と説明している。そうであるならば知的財産条項だけでなく、その全てをすみやかに公開するべきだ。 政府から与えら
1976年,米国議会は著作権法を大幅に改正した。そのときに上院で次のような議論があった。 もしも著作物が「絶版」であったり,通常の購入経路を通じては購入できない状態にあったとしたら,ユーザーがこれを複写するのに正当化事由が認められやすいというべきであろう1)。 すでに20世紀半ば,研究者のH. ベイルは次のように指摘していた。 もし著作物の合理的な使用を禁止してしまうとすれば,後から出てくる著作者は先人の著作物を改良していくことができなくなる。 このような発想は,実は著作権法の先進国――18世紀の英国――に生まれていた。このあとの多様な判例が上記の改正に反映され,新しい著作権法の107条に,「公正使用」(fair use)という原則として組み込まれた。 ここでその公正使用を紹介しておこう。これは,公正な条件を満たせば,先人の著作物を自由に利用しても,それは著作権侵害にはならない,という原則
また条文は変わるのではないかと思っているが、中国と台湾で並行して著作権法改正の話が動いており、丁度良いので両方の現時点の案をまとめて紹介しておきたいと思う。 (1)中国の著作権法改正案 数年前からパブコメが何度かあったが(第1回は2012年4月、第2回は、2012年7月)、最近ではこの2014年6月6日から7月5日までの期間で著作権法改正案がパブコメにかかっていた(中国法制弁公室の意見募集ページ参照)。 その解説(doc)をざっと見ただけでも、法改正事項は、例えば、25年の保護期間の実用芸術著作物の導入、著作権契約関連規定の整備、プロバイダーの責任に関する規定の導入、権利の複数人への販売懲罰的賠償規定の導入など多岐にわたるのだが、ここでは特に、この最近の著作権法改正案(doc)の中から、私が強い関心を持っている権利制限に関する部分を以下に訳出する。(以下は全て拙訳。) 第4章 権利制限 第
かなり前から検討自体は進められていたものだが、先月2月13日に、フェアユース導入提言を含む、オーストラリア政府の法改正委員会(ALRC)がまとめた報告書「著作権とデジタル経済」が公開されたので、この機会に少し紹介しておきたいと思う。 この報告書は米英の動向も含め良くまとまっており、孤児作品に関する提言なども含まれ、興味のある方は是非原文にあたって頂きたいと思うが、かなり大部のものとなっており到底全ては紹介し切れないので、以下、その概要からフェアユース導入提言関連部分を訳出する。 A flexible fair use exception The ALRC recommends the introduction of fair use. Fair use is a defence to copyright infringement that essentially asks of any p
12月7日、早稲田大学で開催された「著作権法学の将来」についての公開講座は、基調講演で日米の著作権法の権威がそろい踏みする豪華な講演会だった。2人とも権利制限の一般規定であるフェアユースをテーマに講演した。フェアユースは利用目的が公正であれば、著作権者の許諾なしの著作物の利用を認める規定。講演内容を筆者なりに要約し、注で補足しながら紹介する。 主催したのは早稲田大学知的財産法研究センタ―で、2013年度JASRAC秋学期連続公開講座の最終回だった。最初にカルフォルニア大学バークレー校ロースクールのパメラ・サミュエルソン教授が、「著作権制限への原則に則ったアプローチについて」というテーマで講演した。 時代とともに強化されてきた著作権 ・1790年に制定されたアメリカの著作権法では、排他的な権利は印刷や出版などに限定されていた。排他的な権利の侵害は、同一またはほぼ同一の複製を行った場合にのみ認
池田さんの紹介にあるように、Googleは著作権保護のオプトアウト(権利者が拒否しない限り許諾したとみなす)への転換をめざしていると、近著「著作権法がソーシャルメディアを殺す」で紹介した。その転換が実現の方向に向けて大きく前進した。11月14日、ニューヨークの連邦地裁がGoogle Books とよばれる書籍検索サービスにフェアユースを認める判決を下したからである。09年に日本の出版業界にも黒船騒ぎを巻き起こした訴訟の判決である。 訴訟は図書館の蔵書を無断でGoogleにスキャンされた全米作家組合などが05年に提起した。08年に和解案が発表されたが、当初の和解案では全世界の著作権者が対象とされたため、日本の出版業界に電子書籍の黒船騒ぎが起きた。その後、対象を英国および旧英領諸国に絞ったため、日本は対象外となった。その修正和解案も11年に裁判所が承認しなかったため、訴訟に復帰していた。 フェ
そういえば昔、和解案をめぐって、どこもかしこも大騒ぎになったことがあったっけ・・・ と懐かしく思い出されるような“Google Books”訴訟決着のニュースが不意に飛び込んできた。 「インターネット検索最大手、米グーグルによる図書の全文複写プロジェクトを差し止める訴訟で、米ニューヨーク連邦地裁は14日、米作家協会の訴えを棄却した。利用者が本を見つけやすくなるなど公共の利益にかなうと判断、著作権侵害にならないとした。」(日本経済新聞2013年11月16日付け朝刊・第9面) 日本に来ると、比較的小さめの記事になってしまうが、米国のメディアではどこも大きくこのニュースを取り上げているようだし*1、S.D.N.YのDenny Chin判事が書いた法廷意見もあちこちで取り上げられている*2。 自分はものぐさな人間なもので、いつもなら、わざわざ原文を見に行くようなことはしないのだが、今回は、何となく
米連邦裁判所は、著作権侵害でGoogleを訴えた作家団体による訴訟を棄却した。書籍は、インデックス化して検索結果に一部を引用して表示することに関してはウェブページと同じであると結論付けられた。 「Google Books」プロジェクトでは、多数の書籍を著作権所有者の許可なくデジタル化し、インデックス化しており、米作家協会(The Authors Guild)がそれを提訴していた。しかし、ニューヨークにある米巡回裁判所のDenny Chin判事は米国時間11月14日、この訴えを棄却し、略式判決を求めるGoogleの申し立てを認めた。 同判事は、検索結果に書籍の内容の「一部」を表示することはフェアユースであるとするGoogleの主張に同意した。フェアユースとは、許諾を得ずに他者の著作物を使用することを許可する原則である。フェアユースの1例としては、レビューにおいて映画の一部を紹介する場合などが
米Googleの書籍全文検索サービス「Google Books」を巡る著作権侵害訴訟で、米ニューヨーク州南地区連邦地方裁判所は現地時間2013年11月14日、「Google Booksはフェアユースの範囲」とするGoogleの主張を認める判断を下した。 Google Booksは、公共図書館や大学図書館の蔵書をデジタル化し、インターネットで検索・閲覧可能にしたサービス。米国作家協会Authors Guildや出版業界は2005年に、Google Books(当時の名称は「Google Book Search」)が著作権侵害に当たるとして、Googleを提訴。2008年10月にGoogleが一定の金額を払うことなどで和解に合意したが、2011年に地裁が和解の承認を拒否し、訴訟は振り出しに戻った(関連記事:Google Booksめぐる集団訴訟、連邦地裁が修正和解案を認めず)。 2013年9月
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Cariou事件判決を、ざっと読了した感想。 本件は、コラージュ的手法を用いる現代アートについて、フェア・ユースの成否が争われたものであり、地裁はそれを否定していた。 控訴裁判決の基本的な流れは、Campbell事件最高裁判決の論理をなぞったものであるといえる。その意味で新鮮さはない。ただ特に注目すべきは、 「地裁は、フェア・ユースの抗弁が成立するためには、二次的利用は『原作品 を批評したり、その歴史的文脈に関係したり、批判的に言及したり、しなけ ればならない』旨求めた。・・・しかしながら、地裁の法的根拠は間違って いる。法は、transformativeであるとされるために、作品が原作品やその作 者について批評するものであることを要件とはしていない。二次的作品が、 たとえ(筆者注:107条の)条文に特定された目的(批判、批評、ニュース報 道、教授、学術、および研究)以外の目的のためのもで
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