いつもは降りない駅。いつもは歩かない道。いつもは見ない景色。いつもは気づかない景色。いつもは自転車で10分もかからない所を、今日は30分以上歩いて帰宅した。新しい発見をひとつずつ頭の中で言ってみた。新しい発見は10や20じゃなかった。 まっすぐ伸びる川。両脇には川に沿った道。そして道を照らす電灯。綺麗な夜景だった。いつも見る川は穏やかでさらさら流れているけれど、今日見た川はザーっと力強い音を響かせていた。聞こえるのは川の流れとスズ虫が鳴き声。橋の真ん中で川の方に向かってしばらく景色を眺める。いつもはもっと下流を見ている。けれど、今日はちょっとだけ上流だ。そのまま空を見上げたら赤い星があった。背中をタクシーが通り過ぎたのをきっかけにまた歩き出す。 そこにあったはずの建物が無くなっていた。そこには無かった建物ができていた。前はついていた電灯、今日は切れかかっていた。使ったことのない自動販売機。