細田守監督の最新作「バケモノの子」(公開中)を見てきましたが、うーん……いまいち感情移入できませんでした。子どもの成長も修行も青春も恋愛もアクションもファンタジーもありサービスてんこ盛り、映像はリッチ、メッセージは健全明朗、青い空には入道雲。――と構えは盤石なのですが、悪いところは、手垢(てあか)のついた常套(じょうとう)表現を使いすぎ、出来事を詰め込みすぎ、心情を言葉で語りすぎ。 でも、これらのキズは心をワシづかみにするようなドラマの芯さえあればかき消せるもの。今回はその、ワシのツメの食い込みが足らなかったと言うべきでしょうか。細田監督の「サマーウォーズ」も「おおかみこどもの雨と雪」も、キズは気になりながらも私の中では愛がまさったのですが……。あ、以下ネタバレですのでお気をつけ下さい。 両親の離婚後、一緒に暮らしていた母を交通事故で失った9歳の蓮は、渋谷の街で声をかけてきたバケモノの熊徹