ルーマニアのアストラ・ジュルジュがクラブ史上初となるヨーロッパリーグ(EL)出場を決めたピッチに、瀬戸貴幸は立っていた。 プレーオフでフランスの強豪リヨンを下しての本戦出場は番狂わせとも言える。試合終了の笛が鳴ると、アストラの選手たちが、思い思いに喜びを爆発させる。ひとりの選手が瀬戸に近づき、小突きながらこう言った。 「おいタカ、お前なんで喜ばないの? 嬉しくないのか?」 その時、スタジアムのオーロラビジョンには歓喜に沸くチームメートを尻目に、笑顔はおろか、むくれているようにも見える瀬戸の表情が映し出されていた。 「嬉しくなかったわけじゃないんですよ。僕、感情を表現するのが苦手なんで(苦笑)。でも、リヨン戦のファーストレグは前半で代えられたし、あのセカンドレグの出場は最後の5分だけでしたから。90分間試合に出てないから、達成感は全くなかった。昨シーズンも全然試合に出れなくて、自分的には納得