18年前の布石 幸英明は武豊より先に動いた。エリザベス女王杯(GⅠ)のゴールへ向けて直線、先頭に立った。 完全に抜け出してGⅠ制覇かと思えた次の刹那、忍び寄る気配を感じた。競り合いの末、僅かにかわされたところがゴール。三冠牝馬スティルインラブと臨んだ2003年のエリザベス女王杯。軍配は武豊騎乗のアドマイヤグルーヴに上がり、幸はハナ差で涙を呑んだ。 「悔しかったけど、同時に『さすがユタカさん……』と思いました」 話はこの少し前に遡る。スティルインラブの牝馬三冠達成を祝うパーティーが大阪であった。これがお開きになった後、幸は偶然、一人の男と知り合った。それが後にアカイイトを所有する岡浩二オーナーだった。 「偶然の出会いで、まだ馬主免許を取得される前でした。岡社長が言うには、初めて知り合ったジョッキーが僕らしいです」 幸は当時をそう述懐する。 ホッコータルマエとのコンビではドバイでも騎乗した幸騎