田宮は作家・山崎豊子と、こんな会話をしている。田宮が主演の万俵鉄平役を熱望した「華麗なる一族」(74年、東宝)についてである。 「鉄平の死に方は純粋で男らしく、壮絶ですね。猟銃の引き金を足で引いて、至近距離で撃てば、顔がつぶれないというのは本当ですか?」 鉄平は雪山の中で松の木の幹に座り、引き金を引く。田宮の問いに、山崎はハッとしたように答えた。 「実はあの場面、最初は顎の下に銃口を当て、足で引き金を引くと、鉄平の顔がザクロのように砕け散ったと書いて出稿しました。けど、どうも気になって、大阪府警本部の鑑識課へ取材に行くと、顎の下に至近距離で撃った場合は、弾はすぽっと頭を抜けて、後ろの松の木の幹に当たって弾けるのが普通ですよ、と教えられて、慌てて原稿を書き直しました」 この言葉を聞いた田宮の目が輝いた。 「そうですか、顎も顔も砕けないで、弾はすぽっと抜けるのですか。美しい死に方ですね」 これ