『音のない花火』(砂田麻美/ポプラ社) 砂田麻美という映像作家をご存じだろうか。大学在学中から映像制作に携わり、卒業後はフリーの監督助手として是枝裕和らに師事した。初監督作品は、がんを患う実父の死を撮ったドキュメンタリー映画『エンディングノート』。プロデューサーに是枝氏を迎え、「家族の死」という重いテーマを、本当の家族ならではのあたたかさ、ユーモアあふれるタッチで描き出し、ドキュメンタリー作品としては異例のヒットを記録した。 その『エンディングノート』から生まれた、もうひとつの物語がある。砂田氏にとって処女作となった長編小説『音のない花火』(ポプラ社)だ。2作目となる『一瞬の雲の切れ間に』(ポプラ社)でも、ラストで圧倒的な光景を見せて絶賛された砂田氏だが、今回、待望の文庫化となる『音のない花火』でも、芸術だけが届く暗闇の底へと、光をもって分け入ろうとしている。 『音のない花火』の主人公・し