『脳には妙なクセがある』(池谷裕二/扶桑社) 「他人の不幸は蜜の味」――なんとも嫌な言葉である。他人の不幸を喜ぶなんて、自分はなんて卑しい人間なのだろうか。しかし、『脳には妙なクセがある』(池谷裕二/扶桑社)を読むと、それも仕方がないのかも知れないと思う。なぜなら脳の仕組みがそうなっているというからだ。 平均22歳の男女19人に、かつての同窓生たちが社会的に成功した生活を送っているシーンを想像してもらう実験を行った。すると、脳内では「前帯状皮質」が活動することが分かった。前帯状皮質とは、不安情動や苦痛に関与する部位である。 さらに、その羨むべき同窓生が、「不慮の事故や相方の浮気などで不幸に陥った」ことを知ったときの脳活動を記録したところ、代わりに「側坐核」が活動を始めたという。側坐核とは、快感を生み出す部位、いわゆる「報酬系」である。つまり、他人の不幸を気持ちよく感じてしまう本心は、根源的