<デモ長期化の原動力は「独自の民族である」とする香港の民族主義。「不正蓄財の要塞」に共産党高官は手を出せない> 「金儲けさえしていれば、満足する人々」──。 少し前まで世界はこう香港人を見ていたのではないか。政治に無頓着で、経済的利益にだけ没頭する、と。しかし本当はそうではない。香港人の間では政治への関心だけでなく、「民族意識」も高まっている。既に2カ月以上続く大規模デモがそれを物語っている。 私は香港が「祖国の懐に回帰」した直後の1997年夏に同地を訪ねた。本土で使われる「普通話」で話し掛けるとあからさまな嫌悪感を示され、代わりに英語を使うと、満面の笑みだったことを鮮明に覚えている。「言葉の好き嫌いの問題は、英国による植民地支配の残滓(ざんし)だろう」と、中国人識者は認識していた。 しかし、私には一種の民族意識が根底に潜んでいるのではないか、との感覚があった。今、香港を席巻している大規模