近年、公共建築の設計に際して、利用者の意見を反映するためのワークショップがしばしば行なわれるようになった。利用者のニーズに合った使いやすい施設をつくるという目的もあるが、もうひとつ重要なこととして、利用者が施設に主体的に関与することを促し、自分たちの場所として愛着を持ってもらいたいという設計者や管理者の思いがある。 手を加え、場所をつくることが、愛着や責任感を生む。だが、開館後も利用者が自分で施設の改修を行なうことは想定しづらい。開館後は利用頻度だけがワークショップの成果と見なされ、利用者は一方的にサービスを受ける消費者にとどまりがちである。公共建築の設計を通じた持続的な市民参画は可能なのだろうか。 「公共」概念の転換 住宅の場合、持ち家であれば、利用者自身が建物を管理しなければならない。建築家の垣内光司は、祖父が残した町家の改修設計を友人から依頼されたとき、その友人自身がすべてDIYで改
チーム体制での参加 ──本日は、「八戸市新美術館建設工事基本設計業務委託」(以下、「八戸市新美術館」)の公募型プロポーザルで最優秀者に選ばれた西澤徹夫さん、浅子佳英さんから、案ができるまでの経緯とその内容、今後の計画についてお聞きします。また、この一例を通して、新しい建築をつくるために必要なプロポーザルのシステムについても伺いたいと考えています。 まずは、設計者として複数のプロポーザルに応募された経験から、お2人が国内のコンペに対して感じていらっしゃることをお聞かせください。 西澤徹夫──私自身は「滋賀県新生美術館の設計者の選定(プロポーザル)」(2015)、「京都市美術館再整備工事基本設計業務に係る公募型プロポ-ザル」(2015)で青木淳さんとともに応募しました。この2つは私が初めて取り組んだプロポーザルでしたが、幸いなことに「滋賀県新生美術館」では次点、「京都市美術館再整備工事」は1等
序──ファブリケーションの現在 3Dプリンターやレーザー加工機など、デジタルファブリケーション技術が社会的に認知されるようになってから数年が経つ。数値制御によって加工を行なう機器の開発は、1950年代のMITにおいてコンピュータやインターフェイスとともに始まっており、歴史は深い。その技術が00年代半ばよりデスクトップスケール(個人スケール)に落ちてきた。それに伴って、旧来の工場型生産から、個人生産を主体とした新たな産業構造が展望され始める。「必要なモノを必要な時に必要なだけつくる」パーソナル・ファブリケーションが称揚され、社会的ムーブメントを巻き起こした。そこでは、資本から個人へと生産システムの民主化が謳われた★1。 また、デジタルファブリケーション技術は、生産システムの民主化の牽引と同時に、デザインや造形のアプローチと方法論を拡張した。 デジタルの創造的活用という面では、画像や音を媒体と
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