(Photo by Ari Hatsuzawa) 7月28日深夜、わたしは病院で天井を見つめていた。 その日の午後、突然自宅で腹痛に襲われた。両手が震えだし、視界が暗くなる。痛みで体が動かず、スマートフォンに手が届かない。 「このまま死んでしまうかも」。そんな考えがよぎる。 痛みの波が少し引いた隙に、匍匐前進でスマホを掴んだ。即、家族に連絡。救急車を呼んだ。 検査の結果、左腎臓の良性腫瘍が破裂したらしい。そのまま緊急手術、入院となった。 「週明けまでベッドから動かず、安静にしていてください」 医師からそう言われたが、ひとりでは寝返りも打てない状態だ。両手を管につながれたまま、見慣れぬ天井を見上げるしかなかった。 この日、阪神タイガースは広島カープとの首位攻防戦3連戦初日。しかし1秒も見られず、硬いベッドでうつらうつらしていた。 その間に、短く浅い夢を数えきれないほど見た。 ほぼ野球の夢だ。